新型コロナウイルスの集団感染が確認されたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客乗員3711人のうち、新たに41人、計61人が感染していたことがわかったと発表された(2月7日、厚生労働省)。日本国内での感染者は86人に達した。在米ジャーナリストの飯塚真紀子氏が、日本の状況を離れた場所から見ながら考えたこととは。
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世界に拡大する中国人、アジア人差別
新型肺炎が感染拡大を続ける中、感染拡大はそのまま、中国人差別、ひいては、アジア人差別の拡大へと繋がっている。
筆者が住むカリフォルニア州でも、差別が起きている。例えば、空港で、白人の女性と一緒に配車サービスを頼んだ中国系の女性は、配車されてきた車にすぐに乗ることができなかった。白人の女性の方が車に近づいてきてはじめて、ドライバーがドアを開けたので、車に乗ると「本当に中国から来ていないだろうな?」と念を押された。そのドライバーは、誰からか、アジア系の名前の客は乗車拒否するようアドバイスされていたという。
中国系の学生が多数いるアメリカ、アリゾナ州立大学では、大学関係者の感染が発覚、アジア系の学生たちの中には「教室で咳をすると、みながジロッと見るの。咳をするのもビクビクしちゃう」と訴える者もいる。アジア系の学生とそうでない学生との間に亀裂が生じているようだ。
学生たちからは「授業に出ることで、命を危険に晒したくない」という声が上がり、大学側に、感染者に関する情報公開と、授業をキャンセルするなどの感染予防策を取るよう求める嘆願書の署名を進めており、2万人以上の署名が集まった。
アメリカ、ワシントン州では、マスクを着用しているアジア系を含めたいくつかのルーツを持つ8歳の男の子を、中国人で感染しているのではないかと勘違いした、コストコの試食スタンドの女性従業員が、男の子に「中国人か? あっちに行け」と言って追い払った。男の子の父親がコストコに苦情を申し立て、ニュースとなった。
イタリア、ローマにある著名な音楽学校、サンタチェチーリア国立音楽院は、中国人、韓国人、日本人などの東洋人の学生に対するレッスンを中止すると発表。しかし、学生の多くはイタリア生まれの2世で、アジアの国々とは関係ないという。学生や教員の間からは「差別だ」という声が上がった。
フランスの地方紙には「イエロー・アラート」の見出し
フランスでは、差別を受けたアジア系フランス人の若者が「私はウイルスではない」というハッシュタグをSNSで拡散して抗議した。また、フランスの地方紙「クーリエ・ピカール」は新型肺炎の記事に「イエロー・アラート(黄色警報)」という「イエロー・ペリル(黄禍論)」をもじった見出しをつけたため、人種差別だと大バッシングを受けた。
「イエロー・ペリル」のイエローとは黄色人種であるアジア系の人々を指しており、「イエロー・ペリル」とは19世紀に欧米諸国で起きた黄色人種に対する脅威論で、人種差別の一種と考えられている。当時、欧米諸国は日本や中国などアジア地域の近代化と国力増強が彼らにとって脅威になると考えていた。
確かに、今や、中国の経済力や軍事力が飛躍的成長を遂げ、欧米諸国が中国を脅威に感じている状況がある。中国に対して持っているそんな恐れが、新型コロナウイルスにより助長され、差別に繋がったのかもしれない。