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76歳の容疑者は何者か?

「名前は自称、谷口」「年齢は70歳ぐらい」

 逮捕された人物が当初取り調べに応じず黙秘していたため、新聞やテレビの第一報は、容疑者についての情報がごく限られていた。このため様々な憶測が飛び交ったが、時間の経過とともに、警察にも「5代目山口組時代に傘下組織として大きな存在感を誇っていた旧『中野会』系に所属していたとの情報がもたらされた」(警察関係者)という。

 中野会とは、会長の中野太郎が率いた5代目山口組時代の2次団体で、中野は5代目体制では最高幹部の一員である若頭補佐として名を馳せていた。中野は「ケンカ太郎」との異名を取るほどの武闘派として知られていた。

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 しかし、山口組の当時の若頭、宅見勝と対立し、中野は配下の者たちに指示して1997年8月、神戸市内のホテルの喫茶店で宅見を射殺する事件を引き起こす。この事件で中野をめぐる風向きが大きく変わる。事件の影響が長く尾を引き、中野会はその後迷走を続け、2005年に組織を解散することになった。

 この事件では喫茶店内に居合わせた一般市民に流れ弾が命中して死亡。暴力団非難が巻き起こった経緯がある。警察庁が高山宅銃撃の直後に「報復事件の防止」を大阪府警などに改めて指示したのは、一般市民が巻き込まれるという警察にとっては悪夢のような最悪の事態を防ぐということが最重要事項のためだった。

活動歴は不明な点ばかり

 今回逮捕された谷口が、中野会解散の際に暴力団業界を引退したのか、引退せずに別の団体に所属したのかについては、警察庁幹部も「活動歴については不明な点が多い」と説明する。

神戸山口組の井上邦雄組長 ©時事通信社

 ただ、別の警察庁幹部は「その後の活動は別としても(神戸山口組組長の)井上と交流があったはず」との見方を示す。

 こうした見立てが成り立つのは、中野会は元々、山健組の傘下組織で、5代目山口組体制時に「直参」と呼ばれる直系の2次団体に昇格していた経緯があるためだ。中野は同じ系統の山健組から5代目山口組組長に就任した渡辺芳則の親衛隊を名乗っていたとの証言もある。

 このため、中野会系に所属していた谷口は、年齢も近い山健組組長だった井上と面識があるどころか、深い交流があってもおかしくないという。さらに次のように指摘する。

「中野会が解散した後に、(神戸山口組組長の)井上は浪人のようになっていた中野会の元組員らの面倒を見ていた。今回の高山宅への発砲は、神戸山口組側からの徹底抗戦のメッセージ、強い意思表示だ」(同前)