最後は将棋に集中できず、先後も把握しないまま例会へ
――三段リーグ5期の間にはどんなことがあったのでしょう?
知花 それがもう、最後は将棋に集中できなくなっていました。ダラけないようにと生活費を浮かすために、3期目の三段リーグのあたりで、また別の方のところで居候を始めていました。最初は歓迎してくれたのですが、迷惑になっていたんですね。だんだん険悪になり最後の三段リーグの後半で、追い出されるような状況になってしまいました。その方にはとても申し訳なかったです。
三段リーグでは、関東の奨励会員も関西への遠征が2回ほどあります。新幹線のチケットもその方の部屋に置いたまま、取りにも行けませんでした。あらかじめ決まっている先後も把握しないで例会に行き、対局相手に聞いたりしていました。退会が決まっても、こんなのじゃプロになれないのは当たり前で、何も思いませんでした。
――28歳で奨励会を退会した後は沖縄に帰ろうとは思いませんでしたか?
知花 その頃、所司先生が会社を作って将棋センターを開き、スタッフにならないかと誘われ、関東に残りました。将棋センターは移転することになったりして1年で辞めることになりました。そのとき、将棋好きの社長さんからIT系の会社に誘われました。ありがたいお話でしたが、今から違う仕事を始めたら、将棋15級みたいに一から修行やり直しだと思ってお断りしました。将棋を教える仕事は特技を生かせるし、やはり将棋が好きなので。いろいろ声もかけてもらえましたし。
将棋講師として一人ひとりを大事に見る
――今は将棋講師だけで生計を立てていますか? 何か所で教えていますか?
知花 奨励会時代に貧しいのには慣れたし、あまりお金のことは考えていないのです。定期的に教えているのは、千葉市のチャレンジ4、府中市の囲碁将棋サロン棋心、松戸市のかくとーふです。不定期で教えているところも合わせれば7か所です。個人指導もしていますし、ネットでも教えてますよ。
心がけているのは、一人ひとりを大事に見ること。趣味でやっている方には楽しんでもらえるように、プロを目指す子には、何でも教えるのではなく自分で考えさせるようにします。
――奨励会退会後は1年でアマ大会に復帰していますね(※奨励会有段で退会した場合、1年間アマ大会に出られない)。大会に向けての勉強はしていますか?
知花 沖縄時代は大会が好きでしたから、奨励会に入って出られなくなり、アマチュアの方と交流の場がなくなったのは本当に残念でした。だから、また大会に出たいとすぐ思いましたね。自分の場合は、教えることが勉強になっている感じです。全国大会とか大きな大会が近くなるとモチベーションが上がるので、それに合わせて勉強します。
――今後やりたいことはありますか?
知花 いずれ沖縄に戻り、道場を開ければいいなと思っています。座って将棋ばかりは良くないので、体を動かせるエイサー(沖縄県の伝統芸能。お盆に踊る)とか、健康に良いことも取り入れて。そのためにお金を貯めているかと言われると、できてないですね。竜王のタイトル賞金を目指そう!なんて思ったりして。プロ棋戦に出て稼ぐのが理想です(笑)。
写真=山元茂樹/文藝春秋
撮影協力=ボードゲームカフェ「チャレンジ4」