これから僕に何が出来るかというと……
――最初の独演会は高田馬場の喫茶店で8人からスタートしたわけですが、もう、興行的には行き着くところまで行きましたか?
松之丞 披露目が終わって、今年中に歌舞伎座での高座が出来たらうれしいな、という思いはあります。そこから先、僕の真価が問われることになるでしょうね。何十年か先に、講談の寄席を復活させるのが僕のプランですが、その何十年かの間に僕に何が出来るかというと……YouTubeしかないでしょうね(笑)
真面目に言うと弟子を育てたりとか、本質的に大事な事はいっぱいあるんですが。大きくみて、YouTube一択です。
――あのYouTubeですか!?
松之丞 あのYouTubeです。題して「神田伯山ティービー」
まずは、披露目の模様を、その翌日に10分ほどのダイジェストにして出していこうと思っています。それを30日間続ける予定です。目指せチャンネル登録10万人、ですね。
演芸界の重要な話を、資料として残していく
――お披露目の後はどんな内容になっていくんですか。
松之丞 戦略的に何を出していくかって重要ですからね。最近、林家木久扇師匠がヒカキンさんにいろいろと教わってユーチューバーデビューしたんです。そしたらどえらい再生回数になっていて。木久扇師匠はビジネス感覚がある人で、ちょうどいいところをついて来てるんですよ。「かわいいおじいちゃんがユーチューバーデビュー」みたいな感じで。本当に発想が柔軟ですよね。でも、僕が楽屋で弁当食べてるところをアップしても誰も見たくないでしょう。
――それ、ちょっと面白そうですけど。
松之丞 基本的に講談、演芸界に特化した内容にしていく予定です。たとえば、寄席芸人たちに僕がいろんなエピソードを聞いていくようなこともあるかな、と思ってます。演芸界の重要な話を、資料として残していくのも面白いんじゃないかと。
――松之丞さん、やっぱり寄席が好きなんですね。2月11日から新宿末廣亭を皮切りに、浅草演芸ホール、池袋演芸場、国立演芸場と40公演、真打昇進披露興行が続きますが、お体、お気をつけて。
松之丞 ありがとうございます。本当は40公演、全部違うネタにしたかったんですけど、それもどうなるか。なにせ、披露目では避けた方がいい、人殺しの話が得意なので、足りなくなりそうで。そして打ち上げは、ウーロンハイのようなウーロン茶で押し通します(笑)。
写真=佐藤亘/文藝春秋