明日のことを考えると酔えないんです
――松之丞さんはお酒も飲みませんね。寄席には打ち上げがつきものというイメージもありますけど。
松之丞 飲めなくはないのですが、明日のことを考えると酔えないんですよね。何か仕事が入っていたら差し支えますし。今の状況があるのは、お酒を飲まなかったことも大きかったと思いますね。前々から言ってますけど、僕は本当にダラダラした打ち上げが嫌いなんです(笑)。晴れの場のキリッとした打ち上げは好きなんですけどね。もっと若いころは、先輩方と時間を共有するのも大切なんだろうと思ってたんですけど、実は芸につながる時間ではないなと思うようになりました。それなら、新しいネタの稽古をした方がいい。この前もある飲み会で5、6杯くらい飲んだのかな。そしたら、楽しかったんですけど。翌日にどんよりしちゃって、もうダメ。細かい体調の変化が嫌なタイプなんですよ。真打昇進披露興行は40日間続きますが、毎日が打ち上げで、対策を練らないと。
――本当に毎日あるんですか。
松之丞 毎日です。
――大変ですね……。
松之丞 もう、ウーロン茶で乾杯ですよ。「お前、酒飲んでねえだろ」と言われても、「いえ、ウーロンハイです」と言い張ります(笑)。でもわざわざ集まって頂いている仲間に、失礼があってはいけないと思うんです。打ち上げに諸先輩や後輩に来てもらうのは、とても光栄なので、失礼がないように。それでいて自分に負荷をかけない。
――そういう態度を取っていると、「売れてるやつは付き合いが悪いな」とか言われてしまいそうです。
松之丞 売れてる人たちが付き合い悪いんじゃなくて、私が悪いんですよね(笑)。こういう事を記事に載せると、本当に誰も来なくなるし、誘われなくなるんですよ。もうね、みんな一つの記事をあんまり信じすぎないように。もっとも本当に好きではないんですが(笑)、我々は虚実の世界に生きているので。サラッとした江戸前の打ち上げをしたいですね。売れるなんて一時のもので、仲間内とは一生付き合うんですから。