ロシアから来るナショナルチームクラスの強豪選手たちとの合同稽古は、高校生にとっても非常に有益な経験だ。
安藤氏は言う。
「ロシア人のコーチは日本の柔道を学びたいという気持ちがありますから、みんなが意欲的です。選手はレベルが高く、日本にないようなパワフルな柔道をします。日本で見られないような技もやります。合宿では、日本の高校生がロシア人に技を教えてもらうなど、良い交流になっています。生徒たちにはここで人間力も学んでもらい、柔道でもレベルが上がっていけばうれしいですね」
2019年1月には、合宿だけでなく大会を開こうという機運が高まり、今年は「東日本大震災復興支援第2回緑川浩司旗争奪高等学校柔道大会」の名称で大会を開いた。2019年の第1回大会の参加校は15チームだったが、今年は18チームに増えた。「森道場」の選手も2年連続で出場している。
大関氏と力を合わせて「J-Spirit」を立ち上げた長谷川信之副代表は「日本の高校生にとっても、海外の柔道スタイルは刺激的だと思う。稽古のやりかたや技の掛け方が違うので、お互いに有益です」と話す。
若い頃、日本で学んだエリックコーチが指導するようになって強くなった「森道場」は、その評判で有望な選手がさらに集まるようになった。エリックコーチと旧知の間柄である大関氏が「J-Spirit」を立ち上げたことで、「森道場」が日本で合宿を行なうようになった。そして2019年春には、「森道場」から「日本人コーチに来てもらいたい」という要請を受けて、田村徹コーチが2年間の予定で現地に渡り、日本流の正しい柔道を指導している。
各地に散らばる柔道家たちの思いは、今ではそれぞれの点から線が伸び、点と点がつながってきた。柔道を軸とした復興支援。国際交流。青少年育成。福島県いわき市から発信される情熱は、着実に広がりを見せている。
写真=松本輝一/文藝春秋
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