昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2020/02/19

「このままじゃいけない」

「地方に引退した競走馬がいる、馬の養老院のような牧場があって、最短で3週間から研修を受け付けるというのを知って、33歳のときに行ってみました。正直言えば、そこで働くつもりはなくて、たまたまテレビで障害者の乗馬の存在を知り、これを仕事にできないものかと考えたんです。

 まずは馬に触れて、世話もしてみないと、と考えてその牧場に行ったんですが、なかなか仕事がキツくて、今思えばちょっとブラックなところで……。そこの従業員たちが人が悪くて、嫌な思いをして、大袈裟ですがトラウマっぽくなっちゃいました」

 大川さんは新卒後に勤めた企業を半年で辞めざるを得なかった。30歳を過ぎたときに希望した牧場での仕事も思うような環境ではなかった。

 一つひとつの就職先が大川さんや従業員にとって働きやすい環境だったならば、ここまでひきこもり期間を長引かせることはなかったのではないか。

ひ老会に参加

「『ひきポス』(注:ひきこもり当事者が発信するメディア)のウェブ版を読んでいて、第1回ひきこもり親子公開対論を見にいったとき、ひ老会のチラシをもらい、行ってみようと思いました。今回が2回目です。

©iStock.com

 参加してみて感じたのは、ひ老会は饒舌というか、お話が上手な方が多いなということ。ほかにもひきこもり当事者の自助会があり、若い当事者が主催する自助会にも行っているんですが、ひ老会ほどしゃべれる人は多くないですね。

 当事者の会や集まりには、横浜や町田とか、いろいろ行っています。いろいろと顔を出してみると、それほどでもないなというところもあれば、もう一回行ってみようというところもある。

 ひ老会は『老いを考える会』という名前にあるように、年齢層が高めですが、ほかの会では参加者に20代、30代が多く、たいてい私が最年長になってしまう。?み合っていない感じを覚えてしまう……」

 大川さんがひきこもりから抜け出せた一因も、さまざまな似た経験をされた当事者の声を聞いたからだろう。

 筆者も生活困窮者支援の現場で相談を受けてきたが、当事者経験はなく、当事者のように、自身の経験からわかり得る助言をすることはできない。支援者と当事者の壁を感じるが、だからこそ、当事者による自助グループには大きな効果が期待できる。

 そして、それぞれの当事者会が誰を対象にしているのか、あるいは地域によって自助グループが少ないことも指摘してくれている。自分に合うグループと出会うことは大きな一歩となるようである。

 ひきこもり支援が児童や若者を対象に始まったこともあり、「ひ老会」のような中高年ひきこもりを対象とする組織や団体が少ないことも大川さんは実感している。今後も増え続ける中高年ひきこもりを支援したり、相互交流する場所自体、まったく足りていないのが現実なのだ。