終着駅ならではの「贅沢なホーム」
山手線のホームは1・2番のりばを内回り、3・4番のりばを外回りが使う。つまり島式ホーム2面2線ということだ。山手線がこれだけ贅沢にホームを使っている駅は、この大崎駅の他には池袋駅だけである。環状運転だから、やってきた電車はそのまますぐに発車して次の駅に向かい、1時間経ったらまた戻ってくるという実にシンプルな運行スタイル。だからのりばは外回りと内回りそれぞれひとつずつあればこと足りるはず。ただ、大崎駅は車両基地にもつながっている山手線の“終着駅”。逆にここを始発とする電車もあるわけで、山手線だけで2面2線という贅沢を与えられているのである。
乗車人員6万人弱から18万人弱に「3倍成長」
他に大崎駅に乗り入れている路線は、湘南新宿ライン・埼京線(相鉄線直通電車を含む)・りんかい線。つまり大崎駅からは横浜方面、相鉄線方面、お台場方面、さらには大宮・高崎・宇都宮方面まで行くこともできる。すべての電車がもちろん停車するから、交通の便は山手線の他の駅、例えば新宿や渋谷、品川などにも引けを取らない。これらの路線の乗り入れは2002年12月1日から。この利便性の大幅な向上もあって、大崎駅の乗客は飛躍的に増加している。
JR東日本が発表している駅別の1日平均乗車人員を見てみると、2001年度の大崎駅は5万7069人。それが2018年度には17万3136人にまで増えている。実に3倍以上である。JR東日本における順位でいうと2001年度の71位から2018年度の14位まで大幅にジャンプアップを果たしている。
ちなみに、「成長した」「変わった」と言われる品川駅は2001年度が25万7361人、2018年度が38万3442人で約1.5倍増。大崎駅の伸び率はそれを遥かに上回っているのだ。すなわち、大崎駅の“急成長”の度合いは山手線で圧倒的なナンバーワン。駅の周辺にまるで林のごとく立ち並ぶ巨大なオフィスビルが、この急成長を支えているというわけだ。
だが、ちょっと待ってほしい。ここ数年の大崎駅の様子を知っていればこの状況にもなんの疑問も持たないかもしれぬ。しかし、1990年代の大崎駅を知っている人にとっては、まるで違う場所にやってきたような印象を抱くに違いない。実際、文春オンラインの担当編集者もかつて大崎駅に住んでいたというが、「あんなにスゴいビル群なんてなかったし、もっと地味なところでしたよ」と話していた。
確かにそのとおりで、今では山手線で一番地味な駅を言い合うアソビをすればたいてい鶯谷や目白、駒込、田端あたりが出てくる。が、90年代だったら間違いなく大崎駅が上がった。それが今や山手線一の成長株。いったい、大崎に何があったのだろうか。