──『仕事に効く 教養としての「世界史」』をはじめ、数々の歴史本がベストセラーになり、今年は文藝春秋の「夜間授業」で「世界5000年史講義」も始められました。いまや出口さんといえば、“歴史の先生”という印象ですが、そもそもどうしてここまで歴史に傾倒するようになったんですか?

出口 ぼくの興味は歴史だけじゃないんですよ。小学校くらいから本が大好きになって読み始めて、小学校、中学校の図書館の本はほとんどぜんぶ読んだと思いますね。ぼくが本を読むときの基準は、おもしろいかどうかだけ。おもしろいと思った本を片っ端から読んでいるうちに、好きな分野が自然とできてきた。宇宙論、生物学、文学、歴史、宗教、哲学、それに美術も大好きですね。とくにきれいなお姉さんの絵が好きです(笑)。だから、歴史は7つぐらいある好きな分野のひとつにすぎないんです。

©文藝春秋

──ただ、その中でも、歴史の本をたくさん書かれていますね。

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出口 じつはツイッターが始まりなんです。ライフネット生命を始めたとき、小さいベンチャー企業ですから、部下に「大手ではできないことをしろ、人とは違うことを考えろ」と言っていたんです。そうしたら、あるとき部下がぼくのところに来て、「出口さん、今日からツイッターをやってください」と指示する。「なんでそんなめんどくさいことをせにゃならんのか」と聞いたら、「保険会社の社長はまだひとりもやってません。普段ぼくらに『人とは違うことをしろ』と言っていますよね。出口さんは有言不実行ですか?」。そう言われて、しゃあないなと思ってツイッターを始めたんです。

 それから2カ月ぐらいして、たまたま京都大学で先生をやっていた友人が遊びにきました。教養学部でグローバルリテラシーという講座を持っていて、そこでイスラム史をやることになったというんです。「イスラム史整理するのが面倒くさいから、歴史オタクの君が代わりにやってくれないか」と言われて、ぼくも頼まれたら断らない人間なんで、「いいよ」と新幹線に乗った。

 1日に最低3回ツイートするというノルマを課されていたので、ちょうどいいやと思って、「今日は初めて母校の京大へ講義に行きます」とツイートしたんです。そしたら、フォロワーから「リスクマネジメントですか、ベンチャー論ですか」と聞かれたので、「いや、イスラム史です」とツイート。そしたら、「わたしも聞きたい」という人が何人も出てきて、「出口さんを呼んで講演してもらおう」という話になった。そこで「人が集まれば喜んで行きますよ」とツイートして、ノルマ3回をクリアです(笑)。

──そこから、いまに続く講演会が始まっていったんですね。

出口 それを年に3回ぐらいやってるうちに、100人、200人と人が集まるようになりました。その中に祥伝社の編集者の方がいて、「おもしろいから、本にしましょう」と言ってくださった。それが『仕事に効く 教養としての「世界史」』という本です。仰々しいタイトルで恥ずかしかったんですが、これが10万部以上出たんです。そこから“柳の下のどじょう”で、「教養」と名のつく本や、世界史の本がたくさん出版されるようになったという次第です。