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連載この鉄道がすごい

2020/02/20

いまも現役の「非常口」、新たなる活用へ

 博物館動物園駅が廃止されても駅舎を残した理由を京成電鉄に聞いた。とてもシンプルなモノだった。ひとつは非常口だ。京成上野駅~日暮里駅間のトンネルは約2km。博物館動物園駅は、そのほぼ中間地点にあたる。

 もうひとつは借地契約の問題だ。皇室用地だったこの付近は、ドーム駅舎側が独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館の借地、動物園側駅舎が東京芸術大学の借地である。その一部でも返すとなれば「原状復帰」する義務がある。その費用や、歴史的資産ともいえる駅舎の価値、それを維持する企業イメージを考慮すれば、借りたままが最善となったようだ。

轟音とともに列車が通過してゆく

一般公開を想定した改修を実施した

 この京成電鉄の判断が2018年に報われた。東京都選定歴史的建造物になったのだ。選定基準は「建築後50年を経過し、東京の景観作りにおいて重要で、できるだけ建築当時の状態を外観で容易に確認できる」である。この制度は1999年に始まり、旧博物館動物園駅は108番目。鉄道関連施設として初めて指定された。

「歴史的建造物」の名に恥じない駅舎

 東京都選定歴史的建造物の指定を受けて、京成電鉄は一般公開を想定した改修を実施した。といっても、なるべく現状を維持し、新たに取り付けた施設は防火用設備とLED照明程度だ。整備したところは地下1階のきっぷ売り場前まで。ここまでは定期的な清掃を実施している。ここから下のエリアは非公開だ。

 また、展示ホールとしての営利事業にはしないという。集客施設として営業すれば「用途変更」扱いになる。建築基準法や消防法、バリアフリー法などをクリアする必要がある。費用がかかる上に「駅」としての原形を保てなくなれば、この建物本来の魅力はなくなる。火も使えない、水も引いていない場所である。トイレは使えず、駅舎の向かいの公園のトイレを利用することになる。

 京成電鉄は「地域貢献のため、文化的な催しに限って使用を許可する」方針だ。音楽関係や芸術品の展示会などの実績があるという。用途は限られそうだけど、音楽関係ならこの音響は面白い。電車の通過音がミックスされるところがご愛敬だろう。

音楽イベントでは、この階段が「客席」になるという
トイレ“跡”はあるが、いずれも使用できない