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棋士が心置きなく対局で力を出せる場所を作っていく

――鈴木九段は2017年に理事になりました。研究会をなかなかできないと思います。

鈴木 自分の中で成績的なことに区切りがついたので、理事をやると前々から宣言していました。永瀬くん(拓矢二冠)にも「研究会をやめて将棋は指さない、1年後の理事選で理事になるための勉強をしたい」と話しました。

今期、念願の初タイトルを獲得した永瀬拓矢二冠 ©︎杉山秀樹/文藝春秋

――理事は現在3年目です。どの部署を担当していますか。

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鈴木 私はいきなり渉外を任されました。師匠がずっと渉外担当で棋戦運営をしていたのでうれしかったですけど、大役なので最初はしんどかったですね。いまは渉外部と普及部を担当していますが、外で見るのと中でやるのとでは大違いで、思うようにいかないことが多いですね。

 いまの目標は、棋士が心置きなく対局で力を出せる場所を作っていくことです。そのためには、注目される場所やメディアへの露出も必要になるでしょうし、賞金を上げていくことも考えていかなくてはいけないですね。

 自分が理事になったころから、藤井聡太七段の活躍などで将棋ブームがきました。いい時期に理事を務めさせていただいていますね。若くて理事をしてもいいという人には、どんどん裏方に入ってほしいと思っています。

自分の個性を出して戦う

――鈴木九段がA級順位戦に在籍されていたころは、藤井猛九段、久保利明九段の3人が「振り飛車御三家」という言葉がありました。振り飛車党は選ぶ作戦が人それぞれで、居飛車党よりも個性が表れやすいように見えます。

鈴木 御三家という言葉は、20年近く前の話だと思うんですけれど、楽しかったですね。それに意識もしていましたし。どんなにいい戦法でも、藤井システムだけは使うまいと心に誓ってやっていました。

振り飛車戦法「藤井システム」を駆使して竜王3連覇を成し遂げた藤井猛九段 ©︎杉山秀樹/文藝春秋

――それはどのような理由ですか。

鈴木 やはり、自分の個性を出すためです。いい戦法でしょうけど、自分には自分の振り飛車の戦い方があるわけです。なので、藤井システムを使わなくても十分戦えるということです。

――そうした思いの中で石田流を復興させたり、中飛車の定跡を進歩させたりしたのですね。

鈴木 石田流は自分が指し始めたことによって研究が進みました。中飛車は近藤正和さんと自分では少し違うんですけど、前に指していた森けい二先生や中村修先生の将棋を見て、まねをして自分なりにアレンジして指しました。好きな戦法は四間飛車ですけど、定跡の貢献度で愛着があるのは石田流と中飛車です。研究が進んだという自負はありますね。

 銀河戦で石田流を桐山先生(清澄九段)にやったときに、解説が師匠(大内延介九段)だったんですよ。定跡にない手を指したら、師匠が「大介のことだから、何か研究があるはずだ」といってくれたのをよく覚えていますね。やはり同業者に認められるのはうれしいものです。石田流は棋聖戦で挑戦したときの原動力になりました。