昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

特集観る将棋、読む将棋

「ジェット機に乗って楽しく旅ができた」藤井聡太七段に敗れた棋士の“充実感”

高野秀行六段に後日談インタビュー

2020/02/16

「一生懸命指せたと思います」

 2月4日に行われた将棋のC級1組順位戦・藤井聡太七段と高野秀行六段の対局後のインタビューで、敗れた高野六段が残したコメントである――。

2月4日に行われたC級1組順位戦・藤井聡太七段と高野秀行六段の対局 ©︎共同通信社

 この対局は、前日に《藤井聡太七段との対局に向けて 47歳おじさん棋士は「今までにないほど勉強している」》という記事が配信された影響もあってか、多くの人が藤井七段だけでなく高野六段にも声援を送り、広く注目されることとなった。

「より対局が楽しみになった」

 記事を読んだ人からのこんなコメントには、ライターである私も編集部も今まであまり例のない「対局前インタビュー」に、大きな手応えを感じることができた。そして、対局後の話も聞いてみたいと思うようになった。

「今までにないほどした」という勉強は、実際の対局で活かされたのか? 一度も話したことがないという藤井聡太と盤を挟んでみて、どういった印象を受けたのか? そして事前インタビューで「いいスーツを着ていく」と言っていたのに、なぜスーツを着ていなかったのか?

 あの対局からちょうど1週間経った夜に、高野秀行六段に話を聞いてみた。藤井聡太七段との対局を終えた後日談インタビューである。

◆ ◆ ◆

実は私、前科がありまして……

――いろいろ質問したいことはあるんですが、まずスーツのことを聞いていいですか? スーツじゃなかったですよね(笑)。

高野 あの事前インタビューの少し前に、名古屋で指導者の方にお話しする機会があって、そこにいいスーツを着ていったんですよ。だから藤井戦でもこれを着ていこうと思っていたんですが、前日に改めて試着してみると……きつい(笑)。

現在47歳の高野秀行六段 ©文藝春秋

――入らなかった?

高野 いや、入ったんですが正座ができないなぁと。言い訳すると、いつも行っているプールが最近、改装工事中で……。

――運動不足だったと。

高野 それでこれは無理だなと。実は私、前科がありまして、対局中にお尻が破けたことがあるんですよ。

――ふはは(笑)。

高野 そのときは午前中だったかな、野月くん(浩貴八段)がトントンと肩を叩いてきたので、「なんだよ?」といったら「お尻、破れてるよ」と(笑)。

――さすがに今回は、お尻が破けたらマズイですよね(笑)。

高野 そうでしょ。だから、いつもと同じ格好にしたんです。でもね、あれも一応仕立てのジャケットなんです(笑)。

対局はAbemaTVで中継されていた

――それで奥様から聞いたのですが、なんでもベルトを忘れていったらしいですね。

高野 いろいろ考えることがありすぎて、全然気づきませんでした。

――大阪でも買えそうなものですけどね。

高野 夜の7時には大阪に着いていたので、その頃ならば、どうとでもなったんです。ただ気づいたのが、ホテルの大浴場に入った後、夜の10時頃で。コンビニ? とか思ったんですが。

――コンビニでベルト売ってないですよね(笑)。

高野 ですよね。それでベストで隠すことにしたんです。