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振り飛車党の鈴木大介九段が「藤井システムだけは使うまい」と決めていた理由

振り飛車党の鈴木大介九段が「藤井システムだけは使うまい」と決めていた理由

鈴木大介九段インタビュー #1

2020/02/21
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 昨年12月14日、将棋ファンが沸いた。将棋の対局、ではない。人気プロや有名アマが参加する麻雀大会「麻雀最強戦2019」で、将棋棋士の鈴木大介九段(45)が優勝する快挙を成し遂げたのだ。

 鈴木九段はタイトル挑戦2回、NHK杯優勝などの実績がある人気棋士であり、将棋界の中でも麻雀の強豪として知られている。麻雀最強戦の決勝では、3人の麻雀プロとの対戦にも臆することなく、強気の戦いを繰り広げた。解説の雀士が「完勝」と称えたほどの堂々たる内容だった。

 本業の将棋では、2017年から常務理事を務め、盤外でも活躍している。2019年度は竜王戦で決勝トーナメント進出、王位戦で挑戦者決定リーグ入り、順位戦B級2組で勝ち越しを決めるなど盤上も好調だ。まず、好成績の要因を聞いてみた。

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(前後編の前編/後編を読む)

鈴木大介九段

対局中も仕事のことで頭がいっぱいだった

――鈴木九段は将棋連盟の理事として多忙な中、最近話題になった麻雀はもちろんのこと、本業の将棋の対局もよく勝っています。

鈴木 現在の将棋の勉強はネット中継を見るぐらいなので、自分でも勝っていて驚いています。考えられるのは、役員になってから現在3年目ですが、前よりも仕事に慣れて、その分だけ余裕が出たことです。これまでの2年は、対局中も仕事のことで頭がいっぱいだったときもありました。

――一時期は持ち時間をかなり使われていましたが、最近は若手棋士のころのように早指しに戻られていますね。持ち時間が半分残っていることもあります。

鈴木 理事になって1年目は仕事が忙しいので、どの将棋も持ち時間は1時間切れ負けのつもりで勝敗は気にせず指そうと思っていました。昼過ぎに終われば、理事の仕事が午後からできるので。でも、早く対局を終えて、理事の仕事に戻ろうと思っていたら、普通勝率も下がりますよね。

 

きっぷよく、お手本になる振り飛車を指そうと

――理事の仕事以外で好調の要因をどう見ていますか。

鈴木 高野さん(秀行六段)が、自分の将棋のことを「アマチュアにわかりやすい将棋で参考にしたほうがいい」と話している記事を読んだんです。その文章が心に引っ掛かりました。

 理事になったら成績が落ちるだろうなという恐怖感と戦っていた時期なので、自分の将棋が指せなくなっているときがあったんですけど、高野さんの文章は読んで思うところがありました。

――高野六段は文春オンラインの記事で、「級位者にぜひ真似して欲しい棋士」として鈴木九段の名前を挙げていますね。共著『将棋「初段になれるかな」会議』でも、鈴木九段の将棋に触れています。

鈴木 うれしくて目がさめましたね。自分は振り飛車らしく筋よく勝負するタイプなので、きっぷよく、お手本になる振り飛車を指そうと。そうしたら、切れ味も増したんですよ。

 プロを目指したときから振り飛車党で、40年近く振り飛車を指しているので、読みよりも感覚を生かして、自分の指したい手を優先してさばきに出ているのが好結果になっていると思います。ここ1年は内容的に振り飛車っぽくて、アマチュアの方が見ても爽快感のある指し方になっていると思いますね。