「ロコモティブシンドローム(運動器症候群=通称“ロコモ”)」という病態があることについては、ある程度浸透したようだ。骨や関節、筋肉などが劣化して、放置すると寝たきりの要因となる状態。「平均寿命」から「健康寿命」を差し引いた数字を作り出す最大の温床と考えられているのがこの「ロコモ」なのだ。
したがって、ロコモに注意すべきは中高年――というのが一般的な考え方なのだが、ここに来て「子どもに起きるロコモ」が、整形外科医の間で話題になっているというのだ。
その名も「子どもロコモ」。いったいどんなロコモなのだろう……。
「だるい」
「かったるい」
「たまの休みくらいゴロゴロさせて」
日本中のお父さんの多くが日曜日になると口にする常套句だ。
ところが最近、こうした発言が小学生の口を突いて出るようになっているという。大人のまねをしているわけではない。本当に「だるく」て、「かったるい」のだ。
「これこそ、まさに“子どもロコモ”の典型的な症状です」
と語るのは、大阪府吹田市にある戸田整形外科リウマチ科クリニック院長の戸田佳孝医師。詳しく説明してもらおう。
子どもロコモをチェックする5つのチェックリスト
「ロコモティブシンドロームとは、運動機能の低下した高齢者が体を動かさなくなることで、さらに“運動器”の劣化が進んでいく状態。最終的には寝たきりになる危険性を孕んでいます。そして、これと同じことが子どもに起きているのが“子どもロコモ”。そもそも高齢者の場合は、加齢に伴う体力の低下がベースにありますが、子どもがロコモになる原因はちょっと違う。
ゲームで遊ぶ時間が増えたため体を動かす時間が短くなり、屋外で安全に遊ぶ場所も減った。加えて車社会の進展や防犯上の都合から“車移動”が増えるなど、日常の中での様々な変化、言い換えれば『生活が便利になったこと』が影響して、子どもが運動不足になっている。その結果、子どもたちのロコモが増えているのです」
埼玉県の小学校1年生を対象に、子どもロコモをチェックする5つの項目をチェックした調査結果がある。チェック項目は次の5つだ。
(1) 両腕を真上に挙げられるか
(2) 前に腕を伸ばした状態で手首を上下に動かせるか
(3) 床にかかとをつけてしゃがめるか
(4) 前屈をして床に指が着くか
(5) 5秒以上片足立ちができるか
調査の結果、このうちの一つでもできない子どもが約4割に上ったというのだ。