首都圏の高校受験は過渡期である。池袋にある中高一貫の進学女子校、豊島岡女子学園が2022年から高校入試を廃止すると発表し、話題になった。これにより、学力上位層の中学生女子が受験できる私立進学校はなくなる。男子も同様だ。駒込の中高一貫の進学男子校、本郷学園が2021年度から高校入試を廃止。他の中高一貫の私立男子校でも、高校入試の廃止を検討していると聞く。
その中で東大合格者数日本一の難関男子校・開成だけは、現時点で高校入試を続けるといわれている。以前、開成中学が所得制限つきの奨学金を始める理由を記事にしたが、この制度は高校入試ではすでに導入されている。他の中高一貫校は高校入試を止めたがっている中で、開成だけは奨学金制度を作ってまで、高校入試を続けようとしているのだ。
高校入試では、開成も決して“楽勝”な立場ではない。中学入試で開成は最難関であり、受験生たちの第1志望校だが、高校入試においてはそうではないからだ。その開成が今後も高校入試を続けていくのかどうかを考えながら、首都圏の高校受験事情の今をみていきたい。
学力の高い子供が高校受験まで残らない
そもそも開成のような中高一貫私立難関校が、なぜ高校
ところが、この10年で首都圏の高校入試をとりまく環境は激変した。まず、中学受験の過熱だ。少子化なのに中学受験生は減っていない。教育熱心な保護者層は、高校入試を避け、子供に中学受験をさせる傾向が強まっている。
そして今は、いかに親に熱意があるかで子供の学力はほとんど決まるという時流だ。そのため、学力の高い子供たちが高校受験まで残らなくなっている。
さらに、文部科学省が“公の教育”を大切して、公立高校の復権に力を入れてきた。税金が投入され、優秀な教師たちが集まったことで、都立や県立校は教育内容がよくなり、大学進学率も上昇し、人気が高まっている。