反日、反米路線が逆風になる可能性も
もうひとつGSOMIA廃棄論と共に、総選挙で使われるカードとして囁かれるのが、元徴用工裁判で被告となっていた日本企業の資産の現金化だ。
前出記者は言う。
「文大統領が読売新聞の報道に即座に反応したことについて、被害者へ向けた現金化へのGOサインを暗示したのではないかという見方もあります。日本の対韓輸出規制にまだ進展がみられないので、日本に強硬路線をとっても大義名分となる。ただ、日本企業の資産の現金化は韓日関係を決定的に悪化させるものですから、選挙のために使うことはあってはならないと牽制する声も出ています。
総選挙は、次期大統領選挙の前哨戦でもあり、もし野党が勝利すれば文大統領のレームダック化は早まりますから、与・野党ともに必死です。与党は南北関係が凍り付いていて“北風”に期待できないぶん、使えるカードは反日、反米カードというわけでしょうが、国民だってもうだまされませんよ。こうしたカードが中道層を動かせるかどうかははなはだ疑問ですし、かえって逆風になる可能性もある」
“北風”とは、北朝鮮との関係により陣営を有利に導くことを言う。保守の場合は、北朝鮮の脅威を際立たせることで、進歩派は、南北首脳会談などの開催により南北友好を謳うことで自らの陣営に有利にしようとしてきた。しかし、その北風も1997年の金大中元大統領が当選した選挙から効果はみられなくなっている。
「それこそ効果がないと分かっている“反日、反米カード”を出すこと自体、与党が圧倒的な優位ではないことを自覚し、焦り始めた証です。ただ、野党は野党で親朴派を一掃できず、まだ弱い。予測不可能な波乱に満ちた2カ月になりそうです」(同前)
野党の目立った動きとしては、2月17日、自由韓国党などの保守派の党が統合し「未来統合党」が船出し、同党からは前駐英北朝鮮公使の太永浩氏が出馬宣言をしていることなど。また、米国から帰国した安哲秀氏が中道派の党「国民の党」を設立するとしている。
文政権は、果たして4月の総選挙で反日、反米カードを持ち出すのか。そして、持ち出した場合、それは国民に通じるのだろうか。