レヴァン・ゲルバヒアニさん

 ジョージアの国立舞踊団を舞台にした『ダンサー そして私たちは踊った』(2月21日公開)で、主人公を演じたレヴァン・ゲルバヒアニ。彼自身もダンサーで演技はこれが初めてにも関わらず、ライバルに惹かれていく青年メラブを繊細かつ情熱的に演じている。ジョージアでは同性愛が描かれていることで、公開時に過激な抗議活動があった。映画ではジョージア舞踊の世界が特に保守的で、男性的に描かれている。

「映画の通り、ジョージア舞踊はとても男性的な要素が強いんです。踊りの中で、男と女の役割がはっきりしている。度々、戦火に巻き込まれた国なので、兵士に扮して踊ることも多いため、繊細さよりも、マッチョさを求められる。僕は4歳から9歳まで民族舞踊を習っていましたが、マッチョな世界観が嫌で辞めたというより、先生が暴力的で辞めたんです。暴力は大きな問題で、子供がこうした文化の中で育つと暴力に抵抗がなくなってしまう。でもこれを解決すれば、多くの社会問題も解決すると思いますね」

 彼自身は、民族舞踊からクラシック・バレエを経て、現在はコンテンポラリー・ダンサーとして活躍している。映画の中でもメラブが教師に強く反発するが、彼自身が投影されているわけではないと言う。

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「これは監督の世界ですから。監督と僕らしさが出ているのは、部屋に『千と千尋の神隠し』のポスターを飾っているところ。監督と一緒にノミの市に行って、これと『となりのトトロ』のポスターを買ってきたんです。僕は宮崎駿の映画が大好きなので。ポスターはそのままもらって、今でも実家に飾ってあります」

 監督はジョージア系スウェーデン人のレヴァン・アキン。進歩的なスウェーデン社会と、ジョージア社会の違いにショックを受けて、この物語を作り上げた。ジョージアと言えばワインや、栃ノ心をはじめとした大相撲力士が日本では有名だが、お国柄や文化はあまり知られていない。

「ジョージアはとても小さな国ですが資源が豊富なため、歴史的にトルコやモンゴル、ロシアから常に脅かされてきました。だから防衛のために盾が必要で、保守的な社会が形成されていったんです。そして、ダンスと音楽がとても盛んです。舞踊団へは母親に入れられました。母はプロではないけど、ダンスがとても好きだったんです。ジョージアではダンスは生活の一部ですから。フォークソングもね。僕はあまり歌は得意ではないですが(笑)」

 本作はカンヌ映画祭などで高く評価され、多くの国でヒット。同性愛がタブー視されてきたジョージア社会に大きな風穴を空けることになった。

「この映画がきっかけで、性的マイノリティのコミュニティが非常に注目を浴びるようになった。人々をインスパイアする部分があったんですね。母も映画を見て『あなたを誇りに思う』と。やっぱり映画には大きなパワーがあるということを感じます。今後はダンスと並行して、演技もやっていきたいですね」

Levan Gelbakhiani/1997年生まれ。「W magazine」誌の「カンヌ国際映画祭2019で最も刺激的なスター」の一人に選ばれる。本作でスウェーデン・アカデミー賞主演男優賞受賞。

INFORMATION

映画『ダンサー そして私たちは踊った』
http://www.finefilms.co.jp/dance/