昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「みなが共に一つの夢を見るためにこの撮影技法が必要だった」――ビー・ガン監督インタビュー

『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』

2020/02/29

source : 週刊文春

genre : エンタメ, 映画

父を亡くし故郷へ戻った男は、記憶を辿るうち、過去という迷宮を彷徨い歩く。2月28日(金)公開の映画『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』は、中国の新世代監督ビー・ガンの長編2作目。仲間と共にほぼ自主映画に近い形で製作したという前作『凱里ブルース』から一転、著名俳優たちを迎えて作られた本作は、新感覚ノワールとしてカンヌ映画祭他で話題を呼び、中国でも異例の大ヒットを記録した。何より人々を驚喜させたのは、映画の後半部分。約1時間に及ぶ3Dによるワンシークエンスショット(長回し)は観客をめくるめく世界へと誘う。

ビー・ガン監督 ©Shigeo Gomi/ReallyLikeFilms Manages

◆ ◆ ◆

脳裏に思い浮かぶ記憶が3D映像に似ていると気づいた

――まずは後半のシーンについておうかがいしたいと思います。3Dで撮る、というアイディアはどのように生まれたのでしょうか。

ビー・ガン この映画のテーマが記憶と夢にまつわるもの、と決まったときから、記憶や夢を表現するのに最も適した映画言語とは何かを考えていました。そうして、自分の脳裏に思い浮かぶ記憶が3D映像に似ていると気づき、これを使おうと決めました。

――初期の頃、3Dはハリウッドのアクション大作などで興奮をもたらすために利用されましたが、近年ではヴェンダースやゴダールなど、作家性の高い監督たちが独自の手法で利用しています。3Dを使って語れるものについてはどのようにイメージされていますか?

ビー・ガン たしかに3Dは当初、ハリウッド超大作において五感を刺激する装置として使われ、奇怪な風景をつくりだすために利用されました。しかし今おっしゃったような先輩方は、映画言語の一つとしてこの手法を粛々と使い始めた。アン・リー監督もそうですね。3Dの利点は、空間と建築物により価値を与えられること。空間に臨場感を与え画面に映る道具やものに具象的な立体性をもたらすことができるし、人々の顔にも、より強い印象を与えることができる。だから僕もこの新しい映画言語を使おうと思ったのです。

©2018 Dangmai Films Co., LTD - Zhejiang Huace Film & TV Co., LTD / ReallyLikeFilms LCC.

――長回しを選択した理由も教えてください。

ビー・ガン 長回しの手法は、観客が物語に没入しやすいという利点の他に、見る側と撮る側、そして登場人物が同じ時間を共有できる効果がある。その効果が観客にどのような印象を与えるか、実際にどういう作用があるかは別として、まずは三者が共にいられることが僕にとって重要でした。