2月25日、東京の将棋会館で行われた棋士編入試験五番勝負第4局で折田翔吾アマが本田奎五段に勝ち、五番勝負を3勝1敗とした。その結果、編入試験に合格して、プロ棋士の夢を実現した。折田さんは4月1日付で四段としてプロ棋士デビューする。

プロ棋士デビューを決めた折田翔吾さん ©相崎修司

共通するのは元奨励会三段であること

 プロ棋士になるには、原則としてその養成機関である奨励会を突破する必要があるが、別のルートとして棋士編入試験がある。過去に棋士編入試験に合格したのは1944年の花村元司九段、2005年の瀬川晶司六段、2014年の今泉健司四段の3名だ。このうち、花村九段は戦中ということもあり、現在と比較して時代背景が違い過ぎるが、棋士編入試験の道を切り開いたのが瀬川六段だ。

 瀬川、今泉、折田の3名に共通するのは元奨励会三段であること。年齢制限に泣いて奨励会退会の挫折を経験したが、アマチュアとしてプロ公式戦に参加し、好成績を挙げたことも共通する。

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 かつて瀬川アマが対プロ戦で7割の勝率を上げたことが、編入試験実現に向けての大きな追い風となった。瀬川のプロ入りとともに、現行のプロ編入試験が制度化された。その制度によってプロ入りを実現したのが今泉と折田の両名である。

「感情がなかなか出てこないです」

 本田戦の終局後、多くの報道陣が対局室に詰めかけた。感想を求められた折田さんは「2、3年前からすると夢のようで、信じられません」と声を詰まらせた。第4局については「こちらの寄せがひどかったので、逆転していても仕方がない。気持ちとしては落ち着いて臨めたと思いますが、内容的には力不足を感じます」と語った。

対局室には、多くの報道陣が詰めかけた ©相崎修司

 試験官を務めた本田五段は「普段通りに指すことを心掛けていました」と振り返る。本田五段は現在、8大タイトル戦の1つである棋王戦で渡辺明棋王に挑戦中。五番勝負の第2局を終えて1勝1敗と、棋界の第一人者を相手に五分に渡り合っている。そのような俊英を相手に、折田さんは見事に勝ち切って夢をかなえた。

 感想戦終了後、改めて行われたインタビューで、現在の心境を尋ねられた折田アマは「感情がなかなか出てこないです。ようやく、一区切りでしょうか。本田五段が投了された瞬間には『自分が棋士になれるというのは不思議』という感覚が湧いてきました」と語った。