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「負けた2局目は相当深刻に落ち込みました」

 また折田さんは将棋YouTuberとして「アゲアゲ将棋実況」で多くの番組を配信し、「アゲアゲさん」の名で人気を集めている。「思いつきで始めた動画配信ですが、多くの反響をいただき、自分が将棋に向き合う大きなモチベーションになりました。これからは今までやってきたことと並行しつつ、棋士としてもYouTubeを役立てていけたらと思います」と展望を述べた。

©相崎修司

 そして五番勝負全体を振り返り「1局の勝ち負けで心の浮き沈みが激しかったです。特に負けた2局目は内容もひどい将棋だったので、相当深刻に落ち込みました。ですが3局目に勝てて、気持ちも高揚してきました。本局についてはここで決めないと苦しいという見込みを持っていました。なぜ勝てたのかはわかりませんが、奨励会時代と比較して、視聴者の方々の応援が大きかったのではないかと思います」と語った。

 プロ編入試験の先輩である瀬川六段と今泉四段に、折田さんのプロ入りについて感想を聞いた。

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 瀬川六段は「うれしいですね。厳しい相手にいい内容で勝ち、良かったと思います。見事な戦いぶりでした。自分もその一人ですが、折田さんの戦いぶりに勇気づけられた方も多かったのではないかと思います。ですが、もちろん本当の闘いはこれから。私も銀河戦で折田さんに負けているので、再戦の機会を楽しみにしています。私や今泉四段もそうですが、プロ入りが少し遅くとも、その代わりに貴重な経験を積んでいるのだから、それを強みにしていけばいいのではと思います」と語った。

これからのほうがやるべきことは多い

 今泉四段は「おめでとう、その一言に尽きます。自らとの戦いによく勝ちました。五番勝負を振り返ってみると、やはり本田五段との一局が大きいでしょう。(最終局までもつれて)2勝2敗になったときのプレッシャーは半端ないでしょうが、重圧を跳ね返して見事に結果を出しました。ですが、これからのほうがやるべきことは多いです。大変なのはわかっているでしょうが、将棋の魅力を伝えられる、皆さんに愛される棋士になってほしいと思います」と後輩への祝福を述べた。

2015年に41歳でプロ入りを果たした今泉健司四段 ©文藝春秋

 折田新四段は、順位戦への参加資格がないフリークラスの棋士としてプロデビューする。当面は、規定の成績(良い所取りで、30局以上の勝率が6割5分以上など)を挙げて順位戦C級2組への昇級を目指すことになる。10年以内(2030年3月31日まで)にC2入りできないと、その時点で引退に追い込まれる。

 簡単な道ではないが、過去にフリークラス四段昇段を果たした棋士で、C2に行けなかった棋士はいない。新たな夢の実現、継続に向けて頑張ってほしい。

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