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「津波太郎」と言われても離れることはできなかった――岩手・田老と津波の因縁

「津波太郎」と言われても離れることはできなかった――岩手・田老と津波の因縁

2020/03/03

genre : 読書, 歴史, 教育

note

すさまじい幾つかの津波を体験してきた人の言葉

 早野氏は、言った。

「津波は、時世が変ってもなくならない、必ず今後も襲ってくる。しかし、今の人たちは色々な方法で十分警戒しているから、死ぬ人はめったにないと思う」

 この言葉は、すさまじい幾つかの津波を体験してきた人のものだけに重みがある。

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 私は、津波の歴史を知ったことによって一層三陸海岸に対する愛着を深めている。屹立した断崖、連なる岩、点在する人家の集落、それらは、度重なる津波の激浪に堪えて毅然とした姿で海と対している。そしてさらに、私はその海岸で津波と戦いながら生きてきた人々を見るのだ。

 私は、今年も三陸沿岸を歩いてみたいと思っている。

2019年07月 田老防潮堤 ©時事通信社

「吉村氏は徹頭徹尾『記録する』ことに徹している。(中略)圧倒的な事実の積み重ねの背後から、それこそ津波のように立ち上がってくるのは、読む側にさまざまなことを考えさせ、想像させる喚起力である」(解説・高山文彦)

 

三陸海岸大津波 (文春文庫)

吉村 昭

文藝春秋

2004年3月12日 発売

 

「津波太郎」と言われても離れることはできなかった――岩手・田老と津波の因縁

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