納得できずに泣いてしまった平手
平手がグループ全体について意識的に考えるようになったのは、まさに坂道AKBに参加したころ、2017年に入ったあたりのようだ。直接的なきっかけはこの年の4月、デビュー1周年を記念して国立代々木競技場で開催されたアニバーサリーライブだった。平手はそのセットリストを聞かされたとき、泣いてしまったという。曲順にストーリー性がないことに納得できなかったからだ。それからというもの、ライブでは積極的に意見を出すようになった。7月に富士急ハイランドで開催された野外ライブ「欅共和国」は、彼女のアイデアも反映して、テーマやコンセプトを決め、それに合わせてオープニングとエンディングが一つにつながるストーリーを持ったショーとなる(※2)。アニバーサリーライブに不満を抱いて以来、平手は《どうやったら欅坂をもっと良く見せられるかっていう方向に考えてました。こうしたらもっと良くなるなとか、欅坂はもっと新しい一面を見せられるっていうことばかりを考えてました》という(※3)。欅共和国が成功を収めると、平手はアルバム制作でも意見を出すようになる。ここからものをつくる面白さにも目覚めていく。
「不協和音」に『これ、私の気持ちじゃん』
もともと平手は、自分からこういうことがやりたいと言うような子ではなかったという。欅共和国はそんな彼女を変えるきっかけとなった。また、これと前後して2017年4月にリリースされた4thシングル「不協和音」との出会いも大きかったようだ。この曲をもらったとき、平手はある意味、どん底にあったらしい。《周りのみんなからの視線をすごく感じる時もあったし、いつも何かを言われてるような気もしたし、誰ともしゃべりたくなかったし。そんな時期に“不協和音”っていう曲が来たので『え?』とは思わなかったですよね。普通に『うんうんうん』『これ、私の気持ちじゃん』みたいな感じになって歌いました》と、当初は歌詞に共感しながら歌っていた。だが、どん底より抜け出してからは、この曲にのぞむ姿勢が変わった。同年末のインタビューでは、《今、客観的に見たら、あんなどん底に落ちてる時にあんな曲が来たら余計に落ちるんじゃないかと思いますけどね》、《逆に言えば、“不協和音”は気持ちが入ったり、その世界に行かないとできないです。だから、できる時とできない時がだいたいわかるので、(ライブで)『今日はできないな』と思ったらできないし、やれるとしても自信はないですし、もうあの時とはモードが変わってるので。その点については大変だったりはしますね》と述べている(※2)。