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 松井の不在を受けてSKEのメンバーは危機感から結束を固めた。とりわけテレビの音楽番組などで松井に代わってセンターを務めた須田亜香里は、この時期から単独でバラエティ番組などへの出演も増え、SKEの顔となっていった。それでもSKEの絶対的センターは松井以外にありえないというメンバーの思いが、復帰時の彼女をグループへ温かく迎え入れることになった。

2012年の総選挙での松井珠理奈 ©文藝春秋

 平手にとってもグループの存在は大きかった。もともと人づきあいが得意ではなかった平手は、欅坂に入ってからも、先述のとおり「不協和音」をもらったときがそうだったように、ほかのメンバーとはあまりしっくりいっていなかった。それが2017年の初めてのツアーを機に、メンバーに本音を言ったり、心を開けるようになり、受け入れてもらえるようになったという(※2)。2019年のインタビューでは、《ずっと支えてくれたスタッフさんとか、メンバーとかに、恩返しをしたいっていうのはずっと思ってます》とも話していた(※3)。

なぜ欅坂は1年以上も停滞したのか

 欅坂は昨年9月、全国ツアーの最終公演として東京ドームで初めてコンサートを開催し、2日間で10万人を動員した。結成から東京ドーム公演を実現するまでの年数でいえば、AKB48の6年8ヵ月、乃木坂46の5年10ヵ月を上回る、4年3ヵ月(CDデビューからは3年5ヵ月)という速さでの達成だった。だが、一方で、昨年2月リリースの「黒い羊」以来、じつに1年以上も新曲が発表されない状態が続いている。そこへ来て平手が卒業ではなく脱退という形でグループから離れただけに、衝撃は大きかった。

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2019年2月にリリースされた「黒い羊」

 欅坂のこの1年間の停滞には、デビューから一気にブレイクしたことにも一因があるのではないか。AKBやSKEがブレイクするまでには数年かかり、メンバーが関係を深める時間が十分にあった。また、AKB48グループには「アンダー」という、劇場公演やコンサートにおいて欠席したメンバーの代役を研究生などが務めるシステムが発足当初より存在する。これに対し欅坂は十分な時間も、休んだメンバーの穴を誰かが埋めるシステムもないまま一躍スターダムに躍り出たため、あとになってグループのもろさを露呈することになってしまったともいえる(平手のけがのため武道館でのコンサートを断念せざるをえなかったことは象徴的だ)。平手としても絶対的センターという立場から、「欅坂をもっとよく見せたい」「欅坂らしさとは何か」と追求するうちに、行き詰まってしまったところもあっただろう。