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将棋界の「師弟戦」はなぜ尊いのか、そのドラマを振り返る

将棋界の「師弟戦」はなぜ尊いのか、そのドラマを振り返る

過去にはタイトル戦で激突した師弟も

2020/02/29
note

約半数の組み合わせで師弟戦が生じていない

 現在(2020年2月29日)における、師弟戦の可能性について考えよう。双方が現役棋士であるのは以下の37組だ(師匠の棋士番号順、左が師匠)。

桐山清澄―矢倉規広(桐山の2-5)
桐山清澄―豊島将之(桐山の0-1)
青野照市―西尾明(公式戦での対戦なし)
青野照市―八代弥(公式戦での対戦なし)
小林健二―伊奈祐介(小林の1-3)
小林健二―島本亮(小林の2-1)
小林健二―古森悠太(公式戦での対戦なし)
小林健二―池永天志(公式戦での対戦なし)
谷川浩司―都成竜馬(谷川の1-0)
高橋道雄―中村亮介(高橋の0-1)
高橋道雄―黒沢怜生(公式戦での対戦なし)
中村修―阿部光瑠(中村の1-0)
中村修―上村亘(公式戦での対戦なし)
塚田泰明―藤森哲也(塚田の1-0)
西川慶二―西川和宏(公式戦での対戦なし)
井上慶太―稲葉陽(井上の0-4)
井上慶太―菅井竜也(井上の1-3)
井上慶太―船江恒平(井上の0-1)
井上慶太―出口若武(公式戦での対戦なし)
森下卓―増田康宏(森下の1-2)
所司和晴―松尾歩(所司の0-3)
所司和晴―渡辺明(公式戦での対戦なし)
所司和晴―宮田敦史(所司の1-0)
所司和晴―石田直裕(公式戦での対戦なし)
所司和晴―石井健太郎(所司の0-2)
所司和晴―近藤誠也(公式戦での対戦なし)
所司和晴―大橋貴洸(公式戦での対戦なし)
中田功―佐藤天彦(中田の0-1)
小倉久史―山本博志(公式戦での対戦なし)
畠山鎮―斎藤慎太郎(畠山の2-3)
畠山鎮―黒田尭之(公式戦での対戦なし)
杉本昌隆―藤井聡太(杉本の0-1)
豊川孝弘―渡辺和史(公式戦での対戦なし)
深浦康市―佐々木大地(公式戦での対戦なし)
鈴木大介―梶浦宏孝(公式戦での対戦なし)
木村一基―高野智史(公式戦での対戦なし)
大平武洋―長谷部浩平(公式戦での対戦なし)

 このうち半数の19組において師弟戦が生じていない。弟子側がデビューしたばかりの棋士もいることも含めて、これから当たることは考えられるが、やはりお互いが勝ち上がらないと実現しない師弟戦のハードルは決して低くはない。ましてや師匠側は、自身のピークを過ぎてから後進の育成を考えるというケースが少なくないため、そういう意味でも師弟がぶつかるというのは相当に大変なのである。

順位戦では、師匠と同じくC級1組に在籍している増田六段 ©相崎修司

女流棋士を師匠に持つ棋士が誕生する可能性も

 また師弟戦が多く行われるには、その年齢差が近いことに越したことはない。現在、奨励会員の弟子を持つ30歳以下の棋士に、菅井竜也八段と高見泰地七段、澤田真吾六段の3名がいる。菅井、高見はすでにタイトル獲得の経験があるし、澤田もタイトル戦出場まであとわずかまで迫った実力者だ。新たな師弟戦の歴史を築くカードが出現することに期待したいものである。

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昨年、弟子が奨励会に入会した高見泰地七段 ©文藝春秋

 最後に、この場を借りて日本将棋連盟に提言をしたい。現在、日本将棋連盟ホームページで公開され、かつ毎年発行される将棋年鑑や将棋手帳にも掲載している棋士系統図があるが、そこには女流棋士がまったく載っていない。

 理想は全員の掲載だが、それが難しくともせめて日本将棋連盟正会員の女流棋士(女流四段以上あるいは女流タイトル獲得経験者)の名前は、棋士系統図に反映させてもらいたいと思う。

 女流棋士でも正会員であれば、弟子をとって奨励会に入会させることもできる。現時点でそのようなケースは生じていないが、将来、女流棋士を師匠に持つ棋士が誕生する可能性もある。改めて、どうかご一考願いたい。

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