女性初の棋士が誕生するかもしれない。3月7日に東京・将棋会館で行われる第66回奨励会三段リーグ戦は、最終節の17・18回戦を迎える。原則、三段リーグで四段に昇段できるのは上位2名。リーグに参加している唯一の女性、西山朋佳三段は3番手につけており、最終日に連勝し、かつ競争相手の星次第では逆転昇段する。女性の奨励会員が最終節に昇段の可能性を残しているのは、今回が初めてだ。
将棋のプロは棋士、女流棋士がいて、棋戦もそれぞれ分かれている。棋士を目指すのは男女ともに可能で、奨励会を抜けるかプロ編入試験を受けないといけない。一方、女流棋士は研修会(アマ初段~五段が在籍する機関)で規定のランクに達する、奨励会を退会して編入、アマチュア代表として女流棋戦に出場して好成績を残すルートがある。
西山は女流棋士ではなく、奨励会員の立場で一部の女流棋戦に出場している。現在は女王、女流王座、女流王将のタイトルを持つ。
「女に負けるなんて恥だ」という世界
女性が奨励会に初めて入ったのは1961年。男社会で修業した時代を、初の女性奨励会員・蛸島彰子現女流六段はインタビューで次のように振り返っている。
<絶対に女には負けられない、女に負けるなんて恥だ、と思っている。ずっと後で知ったんですが、私に負けたら丸坊主になる、罰金を払う、というルールを男の子たちは作っていたんだそうです>
<私も奨励会時代に負けが込んだ時には、「やっぱり女の子には無理なんだよ」「かわいそうだから辞めさせてあげればいいのに」という声が飛び交って。とにかく私のほかに女性がいないので、なんでも私を基準に推し量られてしまう。私が負け続ければ、「やっぱり女に将棋は向いてない」となる。たまたま弱い私が苦労しているだけ。女性だからじゃないのに、っていう密かな抵抗の気持ちは、常に私の中にありました(笑)。女は私ひとりだから、そうなってしまうのは仕方がないんですけれど>