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特集観る将棋、読む将棋

2020/03/06

 西山が三段に昇段したのは2015年12月。1期目の三段リーグ最終戦は、藤井聡太三段の史上最年少四段昇段を懸けた勝負になった。結果は藤井勝ち。西山は敗れたものの、最終成績は10勝8敗の勝ち越し。新参加としてはまずまずの成績を収めた。

 だが、以降の三段リーグでは苦戦が続き、昇段レースにはなかなか絡めなかった。西山は三段リーグ独特のプレッシャーを次のように語っている

<三段だと、その日の1局目に負けたとき、次の対局はめちゃくちゃきついんですよ。もうひとつ負けたら終わりだと思うから。三段リーグはどこかで連敗すると上がれなくなるんで、1局目に負けた後のメンタルの保ち方は、三段全員の課題だと思います。二段だったら、極端にいえば「次は研究課題の将棋を1局指して、次回から頑張ろう」と思えるんですけど、三段リーグは全部、自信のある戦型を指さないといけないです>

 

 三段リーグは半年間のリーグ戦で、例会は月に1、2回ある。1日に指す局数は2局だ。

 奨励会二段までは、いいところ取りで勝ち星の規定を満たせば、段級が上がる。しかし、三段リーグは全18回戦のリーグで、基本的に上位2名しか棋士になれない。スタートダッシュを決めても途中で崩れれば昇段の目が消えるし、いくら好成績でも上位者がいては棋士になれない。

<元三段の石川泰さんが「三段リーグは、自分のあらゆる感情のピークを知れる場所」といっていて、その表現がぴったりだと思いました。極限の状態の自分を知るって、逆にいえば極限状態のみんなを見ちゃうんですよ。全員が必死で、二段以下じゃありえないような気合いの入れ方です>

 

「あれは過呼吸でした。全部なくなっちゃう恐怖があるんで」

 喜怒哀楽、どれかが過剰になると指し手は乱れやすい。勝負のプレッシャーをかけるのは相手ではなく、自分自身のときもある。西山は過呼吸になったこともあるそうだ。そのことを尋ねると、快活にしゃべっていた西山は静かな声で答えた。

「あれは過呼吸でした。全部なくなっちゃう恐怖があるんで、私も含めて、みんな苦しんでやっていると思います」

 第66回三段リーグは昨年10月に始まった。記者が西山にインタビューを行ったのは開幕前で、西山は里見香奈女流六冠との霧島酒造杯女流王将戦三番勝負、リコー杯女流王座戦五番勝負も控えていた。ダブルタイトル戦と三段リーグの平行について、西山は「将棋の質を求められるのは当然ながら、体力とメンタルの総合力の勝負になる」と語っていた。