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女流棋士が棋士に勝つまで「10年以上」かかった

 蛸島は特例規定の「指し分けで昇級」により、初段まで上がった。女流棋士制度がスタートしたのは1974年で、報知新聞社の主催でいまの女流名人戦が創設される。その後、現在までに女流棋界は公式戦の数が7つ、現役女流棋士が68人と大きく発展した。

 トップの女流棋士が棋士の公式戦に出場するようになったのは1981年からだが、初勝利を収めるには1993年と時間がかかっている。2003年、初めてA級棋士に勝ったものの、年間のトータルでは大きく負け越しが続いた。

 

 だが、『里見香奈、渡部愛、伊藤沙恵……女流棋士が「対男性棋士」で過去最高の成績だった理由』の記事のように、2018年度の「女流棋士の対男性棋士成績」が16勝20敗(勝率0.44)と勝ち数、勝率ともに過去最高を記録した。2019年度は3月2日現在で、16勝23敗(0.410)。里見香奈女流六冠は好成績を挙げ、棋士編入試験受験の資格「棋士の公式戦で良いところ取りで10勝以上かつ勝率6割5分以上」にあと1勝に迫ったが、最後は西山の師匠、伊藤博文七段に阻まれている。

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「極限状態」西山が三段リーグについて語ったこと

 これまで奨励会三段に昇段した女性は、里見香奈と西山朋佳の二人だけだ。

 先に奨励会に入会したのは3歳下の西山で2010年、中学校2年生のときだった。師匠には女流棋士を勧められたが、「自分の力が通用するか試したい」と奨励会を選んだという。里見は2004年に女流棋士になっていた。2011年、女流三冠ながら特例で奨励会1級の編入試験を受ける。4級の西山は試験官のひとりを務めたが、里見が制して入会を決めた。2012年1月、里見は初段に昇段する。現行の昇段制度では女性初の快挙だった。2013年7月に二段、同年12月に三段。しかし、里見は第55~57期の三段リーグを休場する。第58期に復帰し、第62期までの5期参加したが、年齢制限により退会となった。