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洋館はひとたまりもなく崩壊、多数の圧死者をだした横浜市

 横浜市の家屋倒壊戸数は、全壊9800、半壊10732、計20532戸に達し、全戸数98900戸の20パーセント強に及んでいる。殊に洋館は石造または煉瓦造りなので耐震性はなく、最初の強震でひとたまりもなく崩壊してしまい、内部にいた者は逃げる余裕もなく大半が圧死した。内外人に親しまれていたグランドホテル、オリエンタルホテルも轟音とともに倒壊し、外人多数が即死した。その他官庁の大半も倒れ、横浜裁判所では末永所長以下100余名がすべて圧死した。

 激烈な地震は、大地に深い亀裂をはしらせ、山崩れを誘い、河岸を崩壊させ、鉄橋を河中に墜落させた。700年前につくられた鎌倉の長谷にある大仏も50センチ地下にもぐり、さらに40センチ近くも前にせり出したほどであった。

鎌倉大仏 ©文藝春秋

鉄道線路は徹底的に破壊され、進行中の列車は脱線、転覆

 大地の激しい動きは、むろん鉄道線路を徹底的に破壊し、進行中の列車はもろくも脱線、転覆した。

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 遭難した列車は24列車で、中にはトンネル内を進行中埋没したものもあった。

 震源地に近い相模湾沿いを走る東海道線は被害は甚大で、機関車、客車ともすべて横倒しとなったものが多かった。

 中でも根府川で地震に遭遇した第109列車の場合は、最も悲惨な結果をもたらした。

 同列車は、東京発の下りで、午前11時40分に小田原を発車した。そして、11時58分すぎ根府川のプラットホームに進入し、機関車のみがホームに入った時、突然列車が激しく揺らいだ。

 車両は完全に宙に浮き、身をかしげると左方の40メートル下の海岸に、断崖を転々ところがり落下していった。

 それと同時に、根府川駅一帯に大規模な地崩れが起り、駅の建物も列車の後を追うように転落し、すべてが海中に没してしまった。

 第109列車の乗客は170余名であったが、助かった者は水泳の巧みな学生30余名と機関手1名のみであった。