昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2020/03/08

目標のひとつ“女子レーサー初のSG制覇”

 ボートレースは、「水上の格闘技」と呼ばれることもあるほど激しい。にもかかわらず、男女がほぼ同じ条件でゴールを争う競技でもある。ボートレースの歴史上、SGではまだ女子レーサーの優勝はない。女子レーサー初のSG制覇は、大山が目指す目標のひとつでもある。

「これまでの選手ができなかったことに挑戦できる立場は、すごくワクワクしています。

 実は以前、寺田(千恵)さんと改まってお話をする機会があって、レディースチャンピオンを獲った日の夜ですね。寺田さんが(2001年に)SG優勝戦で1号艇になった時の話を聞いたんです。やっぱり信じられないくらいのプレッシャーなんですよね。一生で一度しかないかもしれないチャンスですし、それってどれだけ苦しいんだろうなと思ったら……私じゃ考えてもわからない。

©石川啓次/文藝春秋

 やっぱり時代も違いますし、昔はもっと女性がレースをすることに対して厳しい時代だったと思うので、そういう環境で走ってきた先輩たちは尊敬しますね。私たちみたいに甘い時代じゃないんで」

勝つために必要なのは「技量」と「メンタル」

 では、そんな偉大な先輩たちに並び、先に行くために大山に必要なものは何か。本人が口にしたのは、「技量」と「メンタル」だ。

「まずは圧倒的に技量ですね。こればっかりは経験を積んでいくしかない。私には旋回の技術もそうですし、男子レーサーと一緒に走る大舞台での経験値も足りない。技術もあって、経験もある先輩の姿を見ると、『これじゃ勝てないよなぁ』と思わされることは多々あります。

 あと強いレーサーに共通するのは、メンタル面でのプラス思考ですね。マイナス思考だと難しいのかなと思います。基本的に私たちは『1着以外はすべて負け』の世界なので、負けることが多い仕事です。でも負けこそが良い勉強なんですよね。6着だったら悔しいですけど、じゃあそれをどうするかという意味で勉強にもなる。むしろ勝ったときの方が、課題が見えにくかったりするので、負けで学ぶことの方が多いですね」

©石川啓次/文藝春秋

 そして逆に、そんな話を聞いていて見えてきたものこそが、大山の持つ「強さ」の正体だ。

 端的に言えば、圧倒的にクールなのだ。

 ひとつひとつのレースに一喜一憂することなく、負けを冷静に受け入れてそこから課題を抽出する。言葉にすればシンプルなことだが、負けを受け入れて噛み砕く作業は、想像以上に難しい。特にボートレースのように勝利が貴重な競技ではなおさらだ。