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「ようやく勝負のスタートラインに立てたかな」と

「昨季はG1とかSGの大舞台を経験させてもらって、自分の力がどれだけ足りていなかったのかが目に見えてわかった1年ではありました。でも、『自分自身が成長したか』と言われると、そういうのはあんまり感じなかったです。ボートレースはモーターもありますし、運の要素もある。今季確実に去年以上の成績が残せるわけでもないですし、感覚としては『ようやく勝負のスタートラインに立てたかな』という感じです。

 初めて経験したSGの舞台は、やはり画面で見るのとは、まったく刺激が違いましたね。その場の空気を肌で感じるだけで、『もっとやりたい』という気持ちが内から湧いてきました」

©石川啓次/文藝春秋

母・博美さんの姿を見て「単純にカッコいいと思った」

 大山がボートレーサーを志したのは小学校3年生の時。すでにレーサーとして活躍していた母・博美さんの姿を見て憧れたのが一番の理由だ。男子レーサーを相手にレースで勝利する姿を「単純にカッコいいと思った」のだという。

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「学生時代の部活では陸上競技の七種競技をやっていました。体力的に色んなことができた方がいいかなというのがあって、ボートレースのことを考えた上で選びました。ただ、私は運動音痴なんですけど。運動センスとボートレースの技術って、全然比例しないですよ(笑)。車の運転とも違いますし」

©石川啓次/文藝春秋

 高校卒業後は、ボートレーサー養成所に入校。「メンタル的にはすごく鍛えられた」という厳しい指導を経て、2015年にデビューを果たした。

「最初はめちゃくちゃ怖かったです。スピードも怖いですし、『こんなに船って暴れるんだ』って思って。『水ってこんなに固いんだ』って思いました。すごく身体も痛いですし、オフロードを車で走っているような感じですね」

最大の魅力は、男女が同じフィールドで戦えること

 それでも少しずつ経験を積み、日々努力を重ねることで、レースで勝負ができることも増えていった。そうして感じたボートレース最大の魅力こそが、「男女が同じフィールドで戦えるということ」なのだと語る。

©石川啓次/文藝春秋

「やっぱり男子と女子で比べると、筋力的な部分だったり、動体視力だったり、男子レーサーの方が女子レーサーにできない厳しい乗り方をできるのは事実です。直線だけなら体重が軽い方が良いかもしれませんが、ボートレースはターンで船の向きを自力で変えないといけないので……。でもだからこそ、そこに勝てたらすごくカッコいいし、魅力的だなと思うんです」