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延焼をうながした最大の原因

 東京市の全焼戸数は、全戸数483000戸中の30万924戸に及んだ。239戸が半焼し、死者・行方不明者(圧死・溺死をふくむ)68660名、重軽傷者26268名に達した。

 火災の発生から鎮火まで42時間にも及んだが、焼失面積と対比してみると、1時間に24万9650坪、1分間に4160坪、1秒間に69坪強が焼きはらわれたことになる。

 また延焼をうながした最大の原因は、避難者の携行する荷物であった。人々は、家財を荷馬車や大八車に乗せたり背に負うたりして逃げまどい、路上はそれらの人と物によってあふれたが、迫った火は荷物に次々と引火していった。人々は、燃えさかる荷物に逃げ道をふさがれて焼死し、火勢はさらにつのって延焼していったのである。

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 さらに路上の電車に火が移って道路を越えて火の手がのび、電線が燃え進んで町々を焼く現象も見られた。

 地震にともなう火災の被害は、横浜市に於ても甚だしかった。市の全戸数98900戸中62608戸が全焼し、圧死者をふくむ死者は23335名、重軽傷者10208名にも及んだ。

新装版 関東大震災 (文春文庫)

吉村 昭

文藝春秋

2004年8月3日 発売