昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2020/03/17

source : 週刊文春デジタル

genre : ニュース, 社会, 経済

「発言を撤回し、深くお詫びを申し上げます」

 森氏はこれを受け、「総理から、私の国会での発言について厳重注意を受けました。私自身、いわき市の出身の議員として、当時の検察官が『最初に逃げた』という地元の声や検察庁が身柄拘束をしていた方を釈放していたという報道に接した地元の方々の不安な気持ちを思い起こし、結果として法務省が確認した事実と異なる事実の発言をしてしまいました。検察庁を所管する法務大臣として誠に不適切なものだと真摯に反省をして、私の発言を撤回し、深くお詫びを申し上げます」などと陳謝した。

 ある法務・検察幹部はこうぼやく。

「9年前は野党議員として検察をいじめ、今回は与党議員なのに法務省のトップとして検察をおとしめる。あなたは疫病神ですか? と言いたくもなる」

安倍晋三首相から国会答弁について厳重注意を受けた後、記者団の質問に答える森雅子法相(中央)=12日、首相官邸 ©時事通信社

「自民党の指導者、あるいは総理候補としても頑張っていただきたい」

 そんな森氏だが、安倍首相の評価は高い。16年、企業の女性幹部が集まるシンポジウムで安倍首相があいさつした際、同席した森氏と稲田朋美氏について「2人とも将来、自民党の指導者、あるいは総理大臣候補としても頑張っていただきたい。こういうことを言うと、多少、自民党内では波紋を呼ぶと思うが、お二人は極めて有力な候補」と述べている。実際、この2人は安倍内閣で重要ポストを任されてきており、安倍首相の発言にうそはなかっただろう。

 しかし、法務大臣になってからの森氏はぱっとしない。ウグイス嬢問題の河井克行前法務大臣の辞任に伴う緊急リリーフとは言え、今年1月には、カルロス・ゴーン逃亡事件に関して「(ゴーン氏は日本の)司法の場で無罪を証明すべきだ」と発言して批判を浴びた。刑事裁判の立証責任は、被告ではなく、検察官にあるのは法律家なら常識だ。本来は被告を守る立場になることが多い弁護士でありながら、ということで、国際的にも「日本の司法制度の歪みを象徴する発言」だとして矢面に立った。

 そんなゴーン事件に関わる失言に続く、新たな失言が「検察官の逃亡」だった。だが、思えば、今回の失言は、黒川弘務・東京高検検事長の定年延長問題がなければ、生じ得なかった。定年延長はもちろん、森氏が一人で判断できる問題ではない。背後に安倍首相、そして、菅義偉官房長官がいたはずだ。そして、その指示があっただろうと推測できる。

 それを思えば、森氏が自身のホームページに記している「短所」がシンボリックに感じられる。そこには、「断るのが下手」とある。これが、森氏が窮地に追い込まれることになった素質上のエッセンスなのかもしれない。

この記事の写真(3枚)

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

週刊文春をフォロー
z