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「ウイルスの起源について異なる見方が存在する」

 翌13日の中国外交部記者会見で「米軍が武漢にウイルスを持ち込んだ説は中国政府の公式姿勢ですか?」との質問が飛んだところ、耿爽報道官が「ウイルス起源説について、一部の米国政府高官と議員が事実に基づかない無責任な発言で中国を批判していることに反対する。米国を含む国際社会にはウイルスの起源について異なる見方が存在する。中国サイドは(起源は)科学的問題であり、科学者と専門家の意見を聞くべきとの姿勢で一貫している」と回答した。

 迂遠な言い方なので何が言いたいかわからない方もいるだろうが、「科学者が決めることで、中国政府としては何もないです」というぐらいに翻訳しておけばいいだろうか。

あやしい液体を街中に噴霧

悪者にされたくないという心理

 まあ、この手の発言は中国の“正常運転”とも言えるので、さほど驚くような話ではないのだが、個人的に興味を持っているのは、民間レベルでも「米国起源説」がかなり広がっている点だ。

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 中国IT大手テンセントのファクトチェックサイト「較真」には、「デマ:台湾の専門家、論文に基づき新型肺炎の起源は米国だと結論づける」「デマ:米CDC、新型肺炎の起源は米国と確認」という2つの記事が上がっている。さまざまな形で米国起源説が出回っているようだ。

 どこが起源だったのか、COVID-19の元々の宿主はどんな動物なのか?……こうした問題は科学的にはきわめて重要だが、現状の危機解決には関係がない話だ。そんなにこだわる必要はないのではと思っていたのだが、中国の友人から届いたメッセージで、彼らの心理がわかったような気がした。

ガラガラの深セン地下鉄

「最新の学説によると、新型肺炎の起源は武漢ではなくて米国だという話があるそうです。それが本当かどうかわかりませんが、ともかく今回の肺炎があっても日中友好は変わらないと信じています」

 新型肺炎で中国が悪者にされて嫌われるのは辛い……という思いがあるのではないか。

 冒頭に紹介した記事「道理を正して、世界が中国に感謝すべきだ」で強調されているように、中国は他国よりはるかに強烈な肺炎対策を実施した。筆者は2月下旬に中国を訪問し、その徹底ぶりに驚愕した。その体験ルポは「文藝春秋」4月号および「文藝春秋 電子版」掲載の記事「中国現地ルポ 『経済大崩壊』が日本を襲う」に詳しい。

出典:「文藝春秋」4月号

 中国は強烈な対策で肺炎の抑え込みには成功しつつあるものの、その損害はすさまじいものがある。これに加えて世界中からお説教をくらって、嫌われるのまでは勘弁してほしい――中国民間にはそうした感情が漂っており、それが「米国起源説」の背景にあるのではないだろうか?

※「文藝春秋」編集部は、ツイッターで記事の配信・情報発信を行っています。@gekkan_bunshun のフォローをお願いします。

文藝春秋

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