「道理を正して、世界が中国に感謝すべきだ」

 2020年3月4日、新華社にこんなタイトルの記事が掲載された(http://www.xinhuanet.com/2020-03/04/c_1125660473.htm)。その一節を訳出してみよう。

新型肺炎対策は“中国の偉業”?

「中国は世界に謝罪するべきだという話があるが、ばかげている。中国は新型肺炎に対抗するべく巨大な犠牲、莫大な経済的コストを費やして、新型肺炎の感染ルートを断った。この肺炎流行において、どこの国もこれほどの犠牲を支払ってはいない。

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 しかも鍾南山院士の研究によると、新型肺炎は中国で爆発的に流行したとはいえ、その起源は中国とは限らないという。今では多くの研究が中国以外の国が起源であったと示唆している。アメリカ、イタリア、イランなどの国ではアジアとの接触履歴がない新型肺炎感染例が見つかったことも、上述の説を補強するものだ。中国には謝罪する理由はない。

中国の鉄道駅構内。人混みの中で消毒している ©AFLO

 今、私たちは道理を正して訴えよう。米国は中国に謝罪すべきだ。世界は中国に感謝すべきだ。中国の巨大な犠牲と努力がなければ、全世界は新型肺炎と戦うための時間的猶予を得られなかったのだから。中国の力によって新型肺炎は長期にわたり拡散をストップさせられた。まさに世界を驚かせ、鬼神をも泣かせる中国の偉業である」

外交部報道官からも「起源は中国じゃないよ説」

 中国が厄介な疫病をもたらしたと批判するのは筋違い、それどころか中国に感謝せよ。そもそも新型肺炎は中国発ではなかったのではないかという、ギョッとするような内容だ。

 新華社といえば、中国の国営通信社であり、中国共産党の姿勢を発表する場である。ただし、上述の記事は黄生という投資家がSNSで発表した文章を転載したものであり、新華社の公式な記事ではない。とはいえ、この逆ギレっぷりが世界の人々を驚かせたことは事実だ。

 そして8日後の3月12日、今度は中国外交部の趙立堅報道官のツイートが再び燃料となった。


「米軍が疫病を武漢にもたらした可能性がある」

 今度は外交部報道官の肩書きだけに、投資家の文章よりも政府に近い。やっぱり中国共産党は「起源は中国じゃないよ説」を推していくのだろうか……との疑いが広がった。