朝の通勤時間帯だからなのか、いわき駅から北に向かう普通列車の車内は思いのほか混んでいた。座席が埋まっているほどではなくて楽に座れるのだが、下り列車なのに座席が6割ほど埋まっていて少し驚いた。もしかするとみんな“復活3駅”に行くのだろうか……。
じっさいは停車駅ごとに少しずつお客も減っていき、富岡駅のひとつ手前の竜田駅で残っていたお客のほとんどが下車。復活3駅の区間に入る頃、筆者の他には鉄道ファンと思しき人が数名乗っているくらいになった。運転再開したばかりで、駅の周辺はまだ帰還困難区域だというからこんなものなのだろう。
ここから各駅を巡ったのであるが、実際は効率的にすべての駅を巡るために行ったり来たりを繰り返した。浪江→夜ノ森→大野→双葉→富岡の順だ。ただかえってややこしくなりそうなので、ここではいわき方面の富岡駅から訪ねた形で進んでいくことにする。
津波で流された「富岡駅」はどうなった?
というわけで、まずは富岡駅である。富岡駅は富岡町という町の中心地。海に近く、ホームから海側を見ると絶賛工事中で、なにか堤防のようなものをつくっているのだろうか。海に近いため、東日本大震災では駅舎が津波で流されて、今ある駅舎は2017年の竜田~富岡間の運転再開にあわせてリニューアルしたものである。なのでピカピカ、真新しい駅を出ると立派な駅前広場。
駅舎の隣には「さくらステーションKINONE」と名付けられている売店&飲食店があった。ごく普通のコンビニ&駅そば的な機能と、ご当地の名物を買ったり食べたりできる機能を兼ね備えている。が、しばらく見ていても観光客と思しき人の姿は見られず、駅前にやってくるのは工事関係者ばかり。駅の周囲を見渡しても、まだまだ復興は道半ばといった雰囲気で、駅ができて列車が来ればそれで万事解決、とは到底いかないようだ。
続けてお隣の夜ノ森駅へ向かおう。ここから今春に9年ぶりの復活を遂げた“復活3駅”に突入する。富岡駅から夜ノ森駅までの車窓はというと、“ごく普通の”田舎町という印象である。