今年の3月11日で、東日本大震災から9年の節目を迎えた。それから数日後の3月14日、震災からの“復旧”という点でまたひとつの節目があった。震災とそれに伴う福島第一原発事故の影響で長らく不通になっていたJR常磐線の富岡~浪江間が運転を再開したのだ。福島第一原発から最も近い福島県の海沿いの鉄路に、実に9年と3日ぶりにお客を乗せた列車が走ったのである。
ここまではテレビなどでも盛んに報道されていたので、常磐線の全線運転再開については多くの人が知っていることだろう。これで震災で甚大な被害を受けた鉄道網の復旧もひと通り完了した。大船渡線や気仙沼線の一部区間が鉄道ではなくてバス(BRT)での復旧なので画竜点睛を欠く感もあるが、一段落だろう。震災復興に向けた大きな第一歩である。
9年ぶり“復活3駅”には何がある?
これでめでたしめでたしと言いたいところだが、運転を再開した駅っていったいどんなところなのだろうか。富岡~浪江間にあって、今回営業を再開した駅は夜ノ森駅・大野駅・双葉駅の3駅だ。震災前に訪れたことがある人や、地元に住んでいたという人ならばよく知っているだろうが、筆者をはじめとする多くの人はこの9年ぶりに復活した3駅のことをよく知らない。ということで、前後の富岡・浪江両駅を含めてこのタイミングで訪れてみることにした。
常磐線の全線運転再開にあわせて、ありがたいことに東京から常磐線経由で仙台を結ぶ長距離特急「ひたち」も復活した。そしてこの「ひたち」は復活3駅のうち大野・双葉両駅にも停車する。だからこれを使えばうまく回れるのではないかと考えた。ところが、時刻表を見てみるとこの区間を走る特急はあいにく1日3往復だけ。普通列車も昼間は2~3時間ほど間隔が空く閑散区間。東京から日帰りですべて訪れるのは難しそうだ。そこで、福島県浜通り地区の中心地・いわきに一泊して翌朝から駅巡りをすることにした。