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 新大久保と言えば韓国人街のイメージが強いが、一昔前までは中国人がかなり多く、池袋に次ぐ「プチ・チャイナタウン」の雰囲気があった。だが、近年の新大久保は中国系の人たちが去り、かわりにテナントに南アジア系の商店やレストランが入ることで、街の表情が大きく変わってきている。

 私が新大久保駅に降り立ってしばらく歩くと、店頭に大量のマスクを積み上げているネパール系の雑貨店を見つけた。売られているのは50枚入りで1箱3500円のマスク(青と白の2種類)と、10枚1袋で750円の白マスクだ。

店員さんの許可を得て撮影。店内にもさらに箱が多数

会社も生産地も中国なのに「日本語の箱」のナゾ

 箱マスクは日本語が書かれているが、会社名は「YIJIN」とピンイン(中国語のアルファベット表記)っぽいスペルであり、生産地も中国だ。おそらく、中国国内のマスクを輸入した在日中国人の業者が、日本語の箱に詰めたのだろう。いっぽう、10枚1袋で売られている白マスクは袋上の表記もすべて中国語である。

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パキスタン系かとみられる、新大久保の他の南アジア系店舗でもマスクが売られていた。こちらは50枚3800円。同じく中国製だ

 中国ではウイルス禍を受け、石油企業のペトロチャイナ、自動車メーカーのBYDや五菱、スマホ大手のOPPO、さらには軍事企業の中国兵器工業集団……とあらゆるメーカーがマスクの製造を開始。3月に入ってからは1日に1億枚以上とも言われる膨大な生産をおこなっているとされる

 いっぽう、中国では3月中旬以降、ウイルスの流行が(すくなくとも公式発表にもとづく限りは)かなり抑制されるようになった。余ったマスクが漏れ出る形で、新大久保のネパール人雑貨店に流れている可能性がある。

路面店で2枚300円で売っている例も

 新大久保の南アジア系商店でマスクが売られている話自体は、実は3月末に民放局のニュース番組や一部週刊誌でも取り上げられたことがある。このときに名前が出た店舗が、バングラデシュ人のブイヤンさんが経営する「ジャンナット・ハラル・フード」だ。