最近、よく耳にする「人生100年時代」というキーワード。とくに女性の場合、男性よりも平均寿命が長いため、結婚していようがいまいが、最後には「おひとりさま」になる可能性が大。しかし、不自由のない老後を過ごすためには、お金や健康など十分な準備が必要だ。


 そこで「週刊文春WOMAN」2020春号では、大特集「女の一生100年って!?」を約40ページにわたって掲載。《働き方》《お金術》《墓問題》から《美容法》まで、100歳まで生きるならば知っておくべき9大問題を総ざらいしている。今回はその中から、《食事術》の企画を全文転載。

 いま猛威をふるうコロナに備えるためにも、日々の食事は非常に大事だ。94歳の料理研究家タミ先生は、幼いころは病弱だったという。80歳のころには足の筋を痛めたが、自作の「お手当て食」で3年かけて杖なしの生活に。その丈夫な体のカギとなるのは、「気候風土にあった日本の家庭料理」だった。

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九州・博多で料理塾を主宰する桧山タミさん、94歳

「目覚めに常温のお水をコップ半分。シュロのタワシを使った乾布摩擦を全身で20分ほど。手先足先から心臓に向かって、ゴボウを洗う感じでザッザッと。冷えは万病のもと。からだを芯から温める工夫は長年、心がけてきました」

 と話すのは、九州・博多で料理塾を主宰する桧山タミさん。大正最後の年に11人きょうだいの10番目として生まれ、幼い頃は病弱だったというが、94歳の今もお弟子さんの集まる勉強会を毎月指導している。

桧山タミさん ©繁延あづさ

 父は眼科医で、福岡市の自宅はお手伝いさんも含めて20人以上が暮らす大所帯。幼い頃から好奇心旺盛で、食べることが大好きだったタミさんが、初めて包丁を持ったのは5歳のときのこと。お手伝いさんに習ってイワシの頭を落とし、内臓を取り除いたという。

 食べ物に並々ならぬ関心のあったタミさんは、博多の女学校を卒業後、17歳のときに母の導きで料理研究家の草分け的存在の江上トミ先生を知り、花嫁修業として「江上料理研究会」の門下生となる。江上さんはパリの料理学校「ル・コルドン・ブルー」で学ぶなど、西洋料理に精通。テレビの料理番組の草創期から活躍するなど、家庭料理の普及に尽力した人物だ。

師・江上トミとの半世紀以上前の海外視察旅行で作った料理雑記帳 ©繁延あづさ

31歳で夫の急逝「とにかくできることを仕事にするしかない」

『週刊文春WOMAN』2020春号

 タミさんは、8歳年上の医師と25歳で結婚し、翌年に双子の男の子を出産。優しくおとなしい性格の夫と、平和でおだやかな日々を過ごしていた。ところが、わずか6年後の31歳の時、夫が急逝する。

「病気になり、手術をすることになったのですが、手術中に出血多量で命を落としました。わたしも夫も命に関わるような病気とは思っていませんでしたので、あまりにも突然の出来事でした」

 最愛の夫を亡くした31歳のタミさんは、4歳の息子2人を前にどうしてよいかわからず、ひとまず実家に身を寄せた。しかし、いつまでも両親に頼ってばかりもいられない。

  「子どもたちを育てていくためにも働かなければならない。とにかく自分にできることを仕事にするしかないと思いました。その時のわたしにできる仕事が料理だったのです」