昨今のワイドショーを騒がせていたお笑い芸人を例にとるまでもなく、「パワハラ」が世間を騒がせることは少なくない。しかし、実のところこれまで日本には「パワハラ」そのものを罰する法律が存在しなかった。

 そんな状況が変わるのが今年2020年だ。6月1日に「パワハラ防止法」が施行されると決まっており、これまで以上に自身の振る舞いに気をつけなければいけなくなる。誰もがハラスメントに無自覚ではいられない時代が訪れたというわけだ。

 自身が誰かを苦しめないためにも、そして、「パワハラ上司」「セクハラ社員」のレッテルを貼られないためにも、必読の内容が詰め込まれた『「職場のハラスメント」早わかり』(PHPビジネス新書)の一部より、パワハラの現状について引用し、紹介する。

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「パワハラの相談数」は氷山の一角かもしれない

©iStock.com

 世の中では「増え続けるパワハラ」という表現が当たり前のように使われています。本書もまた、その前提で話を進めてきています。

 でも、本当にパワハラは増えているのでしょうか。

 先ほども少し触れましたが、厚生労働省が、平成28年度について行った職場のパワハラに関する実態調査では、調査企業のうち約半数でパワハラについての相談があり、そのうちの約7割、つまり全体の約3分の1の企業で実際にパワハラと判断される事例があった、ということになっていました。

 一方、従業員に対する調査では、過去3年間にパワハラを受けたことがあると回答した人は、回答者全体の32.5%に上りました。

 この数字からは、やはり全体の3分の1くらいの企業でパワハラが発生している、という実情が見えてきます。ただ、注目すべきは次の調査結果です。下の図をご覧ください。

©PHPビジネス新書

 同じく従業員に対する調査で、「パワハラを受けた後にどのような行動をしたか」について質問したところ、40.9%が「何もしなかった」、また12.9%が「会社を退職した」と回答しているのです。

 つまり、パワハラを受けても黙っている人が相当数いるうえに、そのまま会社を辞めてしまう人もいる。相談があったケースはあくまで氷山の一角かもしれず、実際にはより多くのパワハラが発生しているかもしれない、ということです。

パワハラ増加の証拠となる数字とは?

 この数字に関して、多いと感じた人もいれば、「そんなもんだろう」と感じた人もいるかもしれません。

 ただ、これだけでは「パワハラは増えているのか」はわかりません。

 世の中のニュースを追っていると、パワハラは増えているように思えますが、果たしてどうなのでしょうか。

 一つ、参考になる数字があります。「個別労働紛争解決制度」の状況です。

 個別労働紛争解決制度とは、労働者と事業主、つまり社員と会社との間の労働条件や就業環境などをめぐるトラブルを早期に解決するための制度です。パワハラに限らず、不当解雇の問題など、会社と雇用労働者の間で発生するあらゆる問題に対応しています。