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増え続ける職場での「いじめ・嫌がらせ」

 各都道府県にある厚生労働省直轄の労働局によって運営されており、相談に乗るだけでなく、助言や指導、勧告を行ったり、紛争調整委員会による「あっせん・調停」をすることで、問題の解決を図ります。

 企業におけるすべての問題がこの制度の下に持ち込まれるわけではありませんが、その増減から傾向を把握することは可能です。

 厚生労働省が発表した数字(平成30年度個別労働紛争解決制度の施行状況)によると、平成30年度における総合労働相談件数、助言・指導申出の件数、あっせんの申請件数は、いずれも前年度よりも増加となっています。

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 中でも総合労働相談件数は111万7983件となっており、11年連続で100万件を超えました。

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 相談内容のうち、パワハラを含むと考えられるのが「いじめ・嫌がらせ」の項目ですが、こちらは過去最高の8万2797件を記録しています。

 次が、自己都合退職(4万1258件)、解雇(3万2614件)となっていますので、この分野についての相談が圧倒的に多く、かつ、増加していることがわかるのです。

「実はこれ、パワハラだったんだ!」も増えている?

 もう一つ注目すべき数字があります。労災保険の補償給付件数の推移です。

 労災保険とは、仕事中に発生した事故などにより従業員が負傷したり病気になった際、その従業員が所轄の労働基準監督署に請求し、要件を満たすことで、「労働災害」(労災)と認められ、国からの各種の給付が行われるというものです。身体的な怪我や病気だけでなく、業務を原因とする心の病、つまり精神障害(うつ病、適応障害、パニック障害など)についても認定が行われます。

 厚生労働省が発表した資料によると、職場での(ひどい)嫌がらせ、いじめ、暴行などにより、うつ病等の障害となり、労災保険による各種補償給付を受けるケースが徐々に増えているのです。

 もちろん、これらの数字をもってしても「パワハラが増えている」とは言い切れないと思います。同様の行為はこれまでにもあったけれど、「パワハラ」という言葉が広まるにつれて「実はこれって、パワハラだったんだ」と気づいたようなケースもあることでしょう。

 とはいえ、社会的な認識が高まっているということも含めれば、「パワハラが増加している」と言ってもいいのではないかと思います。