昨今のワイドショーを騒がせていたお笑い芸人を例にとるまでもなく、「パワハラ」が世間を騒がせることは少なくない。しかし、実のところこれまで日本には「パワハラ」そのものを罰する法律が存在しなかった。
そんな状況が変わるのが今年2020年だ。6月1日に「パワハラ防止法」が施行されると決まっており、これまで以上に自身の振る舞いに気をつけなければいけなくなる。誰もがハラスメントに無自覚ではいられない時代が訪れたというわけだ。
自身が誰かを苦しめないためにも、そして、「パワハラ上司」「セクハラ社員」のレッテルを貼られないためにも、必読の内容が詰め込まれた『「職場のハラスメント」早わかり』(PHPビジネス新書)の一部より、パワハラ問題の対処法を紹介する。
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「トラブル発生!」の前に「どう対処するか」を決めておく
では、実際にパワハラが疑われる案件が出てきたら、どうするか。
その前にまず、いざ問題が発覚した場合、どういう体制や手順で解決を図るかを決めておく必要があります。どのように事実認定を行うのか。もし事実だと判明した場合、どのようにその対応を話し合うのか、といったことです。この際、パワハラ相談窓口とは別に、責任者も含めた「パワハラ対策委員会」を設置し、問題の解決を図るのが一般的です。事実確認や懲戒処分、解決策の作成などに関して、公平性と一貫性を確保するためです。
一連の流れの例を図式したので、参考にしてください。
パワハラに限らず、各種ハラスメント全般についてこうした対応をすべきでしょう。
相談窓口が「パワハラ隠し」に加担しないように
対応時のポイントはいくつかあります。まずは先ほどアンケートのところで述べたように「放置しない」ことが大事。
そして、実際に相談者と対面して話を聞く際には、「相談者の話をじっくり、ゆっくり聞く」ことが挙げられます。
相談の中には、「それって本当にパワハラなの?」というようなケースもあるでしょう。それでもまずは、最後まで相手の話をじっくりと聞くべき。ヒアリングも複数回行うほうがいいでしょう。相談者が「話を十分に聞いてもらった」と感じることで、相談担当者(カウンセラー)との間に信頼関係が生まれ、結果として相談対応がうまくいくからです。
ここでやってはいけないのが、「相談担当者が説得しようとする」ことです。たとえば、上司からのパワハラじみた指導を訴えた社員に対して、「上司は君のためを思って指導しているのだから、もう少し我慢できないか」「君のほうにも改善すべき点があるのではないか」などとアドバイスするようなことです。このような対応をされると、社員は「結局、会社は上司の味方なんだ」と思ってしまうことでしょう。
相談担当者はアドバイザーではありません。あくまで「聞く」ことに徹しましょう。