パワハラ加害者に正当な罰を与えるために
当事者同士を遠ざけるために上司に異動を命じる際も同様に、上司が拒否することはできません。人事異動は就業規則に基づく使用者側の権利です。原則としては従業員の同意を得ずとも、会社側が一方的に命ずることができます。もし、正当な理由なしに命令に従わなければ、懲戒解雇することができます。
もっとも、これまでの労働慣行上転勤がなかった職場の社員を転勤させる場合などは、法律上、本人の同意を得ないと「人事権の濫用」として、異動が認められないようなケースもありますが、パワハラを原因とした異動ならば、そうしたこともないでしょう。
人事担当者としては、こうした「理論武装」をしておくことも重要です。
困ったら「個別労働紛争解決制度」の利用も
もし、社内でのパワハラ対応の結果、問題がこじれてしまい、当事者同士ではどうにもならなくなったら、どうするか。お勧めしたいのが「個別労働紛争解決制度」の利用です。
これはもともと労使間のトラブルの調停制度として設けられていたものです。担当者は各種トラブルの解決に精通していますし、制度の利用は無料です。
相談の結果を受け、都道府県労働局長による助言・指導、さらには勧告が行われ、解決が図られます。それでも解決されない場合、「紛争調整委員会によるあっせん・調停」が行われます。
調停とは、同委員会の調整委員が調停案を作成し、調停、受諾勧告をして、紛争の解決を図るものです。パワハラに限らず、セクハラやマタハラ、解雇や配置転換、出向、労働条件や労働契約に関するトラブルなど、あらゆるものを対象とした制度です。
解決までには、ケースにもよりますが1カ月から数カ月くらい。もし民事訴訟となれば数年がかりになることを考えれば、かなり早期の解決が図れることがわかると思います。