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パワハラを受けても40.9%が「何もしなかった」……職場のハラスメントは増えているのか

『「職場のハラスメント」早わかり』より #1

2020/04/13
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かつての流行語大賞「セクハラ」の今

 さて、ここまで「パワハラ」の話ばかりをしてきましたが、いわゆる「ハラスメント」は他にもあります。

 その第一が「セクシャルハラスメント」、いわゆる「セクハラ」です。

 そもそもパワハラという言葉自体が、セクハラという言葉から生まれたものでもあります。1989年には「流行語大賞」を受賞しており、すでに30年にわたって使われ続けている言葉だということがわかります。

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 パワハラに先立って法整備が進められており、1997年には「男女雇用機会均等法」において企業にセクハラ防止に配慮する義務(配慮義務)が課され、2006年には「配慮義務」が、必ず会社が守らなければならない「措置義務」になりました。

 これほど長くセクハラ防止が叫ばれている以上、件数は減ってきていると思われそうですが、実際にはどうなのでしょうか。

©iStock.com

 数字を見てみると、セクハラは増加こそしていないもののほぼ横ばいというのが現状のようです。平成29年度のセクハラに関する相談件数は6808件で前年よりは減っているものの、是正指導が行われた件数は4458件で前年より増えている、といった具合です(平成29年度 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)での法施行状況)。

セクハラの被害者は女性だけではない

 セクハラとは「セクシャル(性的な言動による)ハラスメント」という意味ですから、男性から女性だけではなく、女性から男性へ、あるいは同性同士のセクハラというものも存在します。

 少々古い数字ですが、平成26年度に都道府県労働局雇用均等室に寄せられたセクハラについての相談件数では、女性からのセクハラの訴えが6725件あったのに対し、男性からの訴えも618件あったとなっています。男性の訴えの数は女性の10分の1くらい、ということです。

「マタハラ」についても、ご存じの方が多いと思います。「マタニティハラスメント」、すなわち産休・育休を取得しようとする女性社員に対してのいじめ、嫌がらせ、不利益な言動や扱いのことです。

 セクハラと同じく男女雇用機会均等法によって企業に防止・相談等の措置義務が課されているものです。これも前述の数字によれば、平成29年度で約2500件の「妊娠・出産等に関するハラスメント」の相談が寄せられ、都道府県労働局により約5700件の是正指導が行われています。