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 前出のランキング2位となった「独身女性が48歳でAV女優デビューした理由」は、同サイトで長く人気を保っている定番記事だ。

「『オンライン』の記事を『ヤフー』などに配信した場合、この記事を『関連記事』としてリンクさせることが多いのです。ウチの記事がヤフーニュースのトピックス欄(通称ヤフトピ)に取り上げられても、PVはヤフーにカウントされる。そこで『関連記事』というリンクを付けて読者を東洋経済オンラインに誘導する。AVなどの下ネタ記事を『関連記事』に指定し、PVを稼いでいるのです」(若手編集者)

「オンライン」関係者によると「下ネタや貧困記事は山田編集長自ら力を入れているコンテンツ」だという。

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「たとえば『売春で学費を稼ぐ貧困女子大生の悲しい現実』、『スマホ販売員が風俗で働かざるをえない事情』という記事のように、貧困を風俗と結びつけることでヒット記事に仕立て上げる手法をよく使う。下ネタ記事もよく読まれていて、『「不倫相手」に選んではいけない人の共通点』、『40歳代の不倫、避妊しないと生じる深刻問題』等の記事もあれば、『性のさいはて、老女潮吹きストリップの衝撃』という目を覆いたくなるような記事まで配信されています」(同前)

 実はこれまでも「オンライン」は常にそのアイデンティティが問われてきた。

 2012年、前編集長の佐々木紀彦氏の下で、「オンライン」は企業の業績予想記事を中心としたスタイルから大幅なリニューアルを敢行。それまで大半を占めていた「週刊東洋経済」からの転載を減らし、オリジナル記事を中心に配信するようになった。それによって同サイトのPV数は約50万から5000万前後へと飛躍的にアップしたのだ。

「当時の佐々木氏は、『社内記者が書く経済記事は読まれにくい』として、外部筆者による下ネタなどの世俗ネタを採用し、PVを稼ぐ方針を取っていた。この時代から経済メディアらしからぬ記事構成やPV至上主義が始まったのです」(当時のスタッフ)

「記者が主役」の現実

山田編集長の下で急成長(東洋経済オンラインHPより)

 スタンフォード大学留学経験を持つ佐々木氏は同社では異色の存在だった。

「30代で編集長に抜擢された佐々木氏は、会社のバランスにとらわれず、自らのセンスで勝負するタイプ。14年7月、佐々木氏は東洋経済新報社を退社し、ネットメディア『ニューズピックス』編集長に転身した。その後任に選ばれたのが一世代上の山田氏だったのです」(同前)

 山田編集長は早稲田大学卒で現在46歳。「週刊東洋経済」の記者時代は、通信業界などを担当し、エース記者として名を馳せた。

「編集長就任後、山田さんは『記者が主役』と宣言。社内の全記者の顔写真を撮影して署名顔出し記事を作るという構想をぶち上げました。また『硬派なニュース、もっと読もう!』という広告キャンペーンも展開。敏腕記者が編集長になり、『オンライン』が、『骨太な経済メディア』へ生まれ変わると、多くの記者から期待が寄せられた」(前出・中堅社員)

 実際に山田編集長は“結果”を出した。レイアウトの見直し、コラム記事の整理やSNSの投稿によるPR活動など、「オンライン」の環境整備を合理的に進め、更なる急成長を実現させた。特に他メディア等から無料コンテンツの提供を受け、効率的にPVを稼ぐ手法が大きな成果を挙げた。17年6月には2億2509万PVと過去最高記録を達成。佐々木編集長時代の4倍強までPVを伸ばした。

 だが、こうした成長軌道のなかで、「記者が主役」との当初のポリシーが置き去りになったという声が社内から伝わってくるのだ。