「オンライン」の躍進は、不況に喘ぐ出版業界の中で明るいニュースとして取り上げられることが多い。しかし今回取材に応じた多くの社員が記者としての葛藤を打ち明けた。
ベテラン記者が嘆く。
「世論に反しても正しいことを言う。これが石橋湛山に象徴される東洋経済で語り継がれてきた言論の歴史です。『オンライン』のラインナップを見ると、そうした歴史を捨ててしまったのかと感じてしまう。『PV達成パーティー』が開かれたと聞くと、白けた気持ちになりますよ」
「オンライン」の山田編集長に日本橋の本社で話を聞いた。
――「オンライン」は何を目指しているのでしょうか。
「あちらは有料なのでビジネスモデルは違いますが、日経電子版に少しでも近づきたい。3、4億PVを目標に掲げています」
――今後もPV優先が続くのでしょうか。
「それは違います。『PV重視で何でもあり』ではありません。楽観的すぎるかもしれませんが、業界全体が伸びているから自然増で1億PVは伸びると思っている。残りの1億PVは、漫画や動画などの新しい表現で増やしていきたい」
――「PV至上主義に陥っている」、「PVの奴隷ではないか」との声が社内から上がっています。
「そういうご指摘は真摯に受け止めます。もちろん価値が高く、数多く読まれる記事をまず目指します。次に大事なのは、よく読まれる記事。3番目は読まれないけど価値が高い記事です。
記事の本数は経済記事が多いんです。ただビジネスとして成立させるため、また経済系記事も読んでもらうために、より多くの人に読んでもらえる記事を入れないといけないと考えています。出版社の部数優先、テレビ局の視聴率優先と同じ話だと思います。ただ記者が書いた記事のPVを社内で公表しているのは止めるべきだと思っています」
――御社がクライアント企業に説明する読者層が、実際と乖離しているのではないかという指摘があります。
「読者調査は、楽天リサーチなどの外部機関に依頼しているので、実際の読者層との乖離はそれほどないと思います」