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「オンライン」では、下ネタ、ライフ記事などは外部ライターが執筆し、経済記事は社内記者が執筆するという体制が取られている。

 同社では各業界に担当記者が配置されており、幅広い取材が可能だ。しかし、「オンライン」で同社記者が執筆した記事が注目を集めるケースは少ない。

「長時間の取材をした骨太の記事を『オンライン』に出稿しても、30分も経てばトップページから消えてしまう。社屋2階にある週刊東洋経済編集部でも『オンライン』のPVが公開されており、50万PVを超えた記事は花丸がついたりする。記事の中身よりどれだけPV数を稼げるかが記者に問われている。営業マンのノルマ争いをさせられているような空気に辟易としている記者も少なくありません。『AV関連の記事が300万PVで桁違いにすごいよ』などという会話を社内で聞くと、当然、記者の士気も低下してしまう」(同前)

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 記事のクオリティにも問題があると指摘するのは、別の中堅社員だ。

「10億PVを目指せ」

「6月にアップされた『さっぱり貯金できない人は「節約」が足りない』という記事では、月収13万円のシングルマザーが6年で1000万円を貯めたという内容を紹介している。ところが月収を全部貯金しても936万円にしかならない。

 また扇情的なタイトルで炎上するケースもあります。最近では、8月1日に配信された『ビールで「太らない」「酔わない」ためのコツ』という記事が問題になった。『ツマミを選べば太らない』などという当たり前の内容なのですが、ビールでダイエットができると勘違いさせるようなページの作りになっています」

 確かに多くの人々に読んでもらうために刺激的な記事を掲載することはあるだろう。ただし当然ながら内容が事実であることが大前提だ。DeNAのウェルクが掲載した健康記事の問題は記憶に新しい。

資料からもPVを重要視していることが分かる 禁無断転載/文藝春秋

 ITジャーナリストの津田大介氏が解説する。

「読者にクリックさせるような“釣り”見出しや、炎上記事でPV数を上げることはできますが、中長期的に見ればブランド力を下げる。社名を掲げている『東洋経済オンライン』がこうした手法を多用すれば会社全体のブランド価値を下げてしまう危険性があります」

 なぜ、このようなリスクを冒してまでPVを追い求めてしまうのか。前出の「オンライン」関係者が語る。

「『オンライン』は、ネット広告によって収入を得るビジネスモデルだからです。PV数が増えるほど広告を表示する広告枠も増え、収入も増える。『週刊東洋経済』など紙媒体の苦戦もあって、会社として『オンライン』の広告営業に力を入れるようになった。2億PVの効果は営業面では絶大で、上層部からは『次は4億PVだ。10億PVを目指せ』との号令が編集部に飛んでいる。記事内容を度外視し、PV至上主義に走らざるを得ない『オンライン』編集部は、社内では“PVの奴隷”と囁かれています」

 だが、こうしたPV至上主義も分岐点を迎えるはずだと指摘する声もある。広告担当社員が語る。

「うちの営業はクライアントの企業に対し、『東洋経済オンラインの読者モデルは、39歳の係長~部長で、預貯金2000万以上のハイクラス』と説明しています。しかし、これはあくまで自社申告の数字です。下ネタ記事を好む読者が本当にハイクラスなのか、つまりクライアントの望む読者と実際の読者層が乖離しているのではないかという疑問の声はあります。実際、記事の内容を理由に広告主から出稿を断られてしまうケースもあります」