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「店員同士の絆が凄いことはわかった」又吉直樹×せきしろ×俵万智による自由律俳句のすゝめ《文春オンライン特別版》

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「蕎麦湯が来ない」をめぐる話

 今回のタイトルになっている「蕎麦湯が来ない」はどちらの句なんですか?

せきしろ 又吉君です。

 このタイトルは本当に絶妙。ほんの数文字の一行でしかないんだけれど、果てしなく広がる物語をもっている一行ですよね。

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又吉 そもそも蕎麦湯が来る店なのかどうかもわからないですし。

俵 ホントそうよね(笑)。

又吉 いつまで待てばいいのか。

せきしろ セルフかもしれないし。

俵 お蕎麦屋さんでも、サラダ蕎麦みたいな、つゆが最初からかけてある場合は来ないんだよね。

せきしろ・又吉 あはははは(笑)。

 サラダ蕎麦ってメニューに書いてあるだけでは判断できなくて。それはそういうタイプなのか、そばちょこにつけて食べるタイプなのか、わかんないですよね。で、あのスタイルでくると、ああ、今日は蕎麦湯は来ないなと思うと、ガッカリする。

又吉 あ、俵さんは蕎麦湯を結構楽しみにしていらっしゃるんですね。

 あはははは(笑)。

左から、せきしろ、俵万智、又吉直樹 (c)Atsushi Hashimoto

せきしろ 僕も蕎麦湯はすごく好きで。自動販売機で売ってないかなって思いますから。

 え、蕎麦湯の? 蕎麦湯だけの?

せきしろ そう。ホント好きなんですよ。どうでもいい話なんですけど、最後につゆが残るじゃないですか、蕎麦つゆが。蕎麦湯はそれに足しますか? 

 うん。

せきしろ 僕は蕎麦湯をだけを楽しみたいから、つゆが残ってたら、つゆだけを原液のままグッと飲んでなかったことにして、それから蕎麦湯だけを飲むんです。

 そんなに美味しい?

せきしろ そんなに美味しいんですよ。

俵 そうかなあ?

せきしろ おかゆみたいですし。

 まあ、ルチンが豊富で体に良さそうだけど。

又吉 「蕎麦湯が来ない」だけでもそれぞれが想像するシチュエーションが違うんですね。

 面白いよね。

せきしろ とにかく、僕は蕎麦湯が好きなんで、蕎麦湯が来ないとドキドキします。自分だけ蕎麦湯が来てないんじゃないかと思うし、もしかしたら蕎麦湯はサービスじゃないのかなとか、自分には重きをおいてない店員なのかなとかも思うし。

又吉 「蕎麦湯、来ないんですけど」とか、あんまり言うと店員を傷つけるかもしれないですもんね。何年か前に経費節減でやめてるのかもしれないですし。

せきしろ 蕎麦湯を知らない世代かもしれない。

俵 え、そんな世代いる?

又吉 います。蕎麦湯がきたとき、「これ、なんですか?」って言う後輩いますもん。「どうすればいいんですか?」って。

せきしろ 「ソンバーユ?」って言われる可能性もある。

全員 あはははは(笑)。