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「店員同士の絆が凄いことはわかった」又吉直樹×せきしろ×俵万智による自由律俳句のすゝめ《文春オンライン特別版》

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東京&銀座をテーマに自由律俳句を詠む

――では、ここで、「東京」あるいは、本日の鼎談場所「銀座」をテーマに自由律俳句を実際に詠んでいただきたいと思います。

 最初は絶対に無理と思ってたんだけど、ゲラを読んでたら楽しくなってきちゃって。私も作ってみたいので参加していいですか?

せきしろ&又吉 もちろんです!

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又吉 では僕から。「営業してるかわからないほど暗い」。これは、中華料理屋さんに多いんですけど、やってると思って入ったら、薄暗くて大将がカウンターに座って新聞読んでて(笑)。僕は18で上京して、こういう風景を見ながら大人になったんで、そこに東京っぽさを感じるんかもしれません。大阪でもどこでも都会はみんなそうなんかもしれないですけど。

(c)Atsushi Hashimoto

 なるほど~。

又吉 そして、「北陸の方のなまりだった」。これも東京に出て来て初めて知ったんです。「北陸もそういうなまりなんや」と。関西弁に似てるんです。だからつい「関西ですか?」と聞くと、「違います」と。以降、お互いにしゃべることもなくなるという(笑)。

 私も、福井県に住んでいたからすごくよくわかります。北陸ならではのマイナー感(笑)。

又吉 で、「あの先輩も一時期いたらしい」。地元のイケてた先輩も「東京にいたらしいで」と後から聞くパターン。これも僕の中では東京っぽいことなんです。

 あ~、切り取り方が素晴らしいなあ、やっぱり。3つで連作になってるようにも感じる。

せきしろ じゃあ、次は僕が。まずは銀座テーマで。「上品なおばあさんが小声でゴシップ」

全員 あはははは(笑)。

せきしろ 今日、銀座駅からここまで歩いてきたんですけど、ホントに見たんですよ、すんごく小さい声で「覚醒剤だって!」。

全員 あはははは(笑)。

(c)Atsushi Hashimoto

せきしろ で、これも東京でしか見られない光景。「スタンプラリーで激怒する親」。駅のスタンプラリーって、夏休みになるとポケモンやガンダムがあるんですが、後半になってくると子供は疲れて、親だけが張り切ってるんです。ガンダム世代は親だから。「やんない? え? 帰る? なんで帰るんだ!」。この感じ、東京でしか見ない夏の風物詩だなあって。

 いやあ、やっぱり素晴らしい! ああ、そうかあ、こうやって作るんだね。同じ題でやってみて改めてわかりました。じゃあ、私のは恥ずかしいからパッパと発表します(笑)。まずは、これ。「銀座で買ったユニクロ」

せきしろ&又吉 おお~。