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「かわいいは正義」サンリオの街・多摩市に登場したキティちゃんのデザインマンホール

マンホーラーの巡礼――多摩編 #2

2020/04/22
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府中市――「デザ貼りマンホール蓋」のこと

 キャラクターが横向きになっている、ふちゅこま蓋もある。ここから府中駅前けやき並木地区の蓋を3枚紹介する。

府中市 ふちゅこま横向き蓋
住所:東京都府中市宮西町1-6 府中駅前 けやき並木通り 駅から出て右側の歩道
府中観光協会 古都見ちゃん蓋
住所:東京都府中市宮町1-41 府中駅前 けやき並木通り 駅から出て左側の歩道

 古都見ちゃんは府中観光協会のマスコットキャラクターだ。これもデザイン画像を上から貼っただけの蓋だ。

 デザインマンホール蓋が社会に注目され始めた頃、「デザイン画像を上から貼っただけの蓋」が低予算のデザインマンホール蓋として登場した。「なんだか違うな」と思いつつ蓋に罪があるわけでもなし、蓋は蓋として観察していた。マンホールカードが登場してデザインマンホール蓋にさらに注目が集まり、ファンも増えていった。また、デザイン画像を上から貼っただけの蓋も増えていった。

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府中市 府中観光協会 古都見ちゃん蓋

 もともと楽しんでいたデザインマンホール蓋は、鋳物の凹凸によってデザインされていた。デザインの凹凸とすべり防止の機能をいかに両立させているか、デザイナーの技量にも感心しつつ多様なデザインを楽しんでいた。また路上に鈍く光る鋳物の力強さも忘れてはいけない。鋳物は時がたつほどに味が出てくる。通行により表面が自然に磨かれていき、鈍いツヤが出てくる。その風景に通行人と蓋との物語を感じるのだ。カラーマンホール蓋と言えば、凹のところに職人によって1枚1枚にカラー樹脂が充填された特別な蓋だった。

 印刷したものをパカパカ貼っただけの蓋のことをデザインマンホール蓋と呼んで楽しんでいたわけではない。ただ言葉の構造上、デザインマンホール蓋と言われてしまうと、「あぁ、広義ではそうかもしれない」と困っていた。間違っていないけど、そういうつもりで言っていたんじゃない。モヤモヤを抱えていた。庇をかりて母屋を乗っ取ろうとしているような気配を感じる。

 デザインマンホール蓋かもしれないけど、デザイン画像を上から貼っただけの蓋のことはそろそろ分類しないとまずいなと思う。観察して分類して研究すると、文化が発展すると思っている。

「デザインマンホール蓋」の価値を下げないように

 これからは「デザイン画像を上から貼っただけの蓋」のことを「デザ貼りマンホール蓋」と呼ぼうと思う。デザイン画像を上から貼っただけの蓋のことを「デザインマンホール蓋」と言われたら、あぁ「デザ貼りマンホール蓋」ですねと言うことにしていく。きちんと分類することは大切だ。悪貨が良貨を駆逐するという言葉がある。「デザ貼りマンホール蓋」が今まで共有していた「デザインマンホール蓋」の価値を下げないようにここで狼煙を上げる。

 念のため断っておくと、「デザ貼りマンホール蓋」が悪いのではない。適材適所だ。横浜市の「マリノスくん蓋」という「デザ貼りマンホール蓋」は、複数枚のうちキャラクターが1枚だけウインクしている。そして、それを定期的に場所替えしている。遊び心があってとても面白い。「デザ貼りマンホール蓋」の長所を生かしている。「デザ貼りマンホール蓋」は、このように工夫して使用するか一時的なイベントや広告などに使えば良い。

 安直に「デザ貼りマンホール蓋」を「デザインマンホール蓋」とごちゃまぜに観光資源化しようとするからダサいのだ。

 府中市の新しいデザインマンホール蓋は、すべて「デザ貼りマンホール蓋」だ。それはこれから紹介するマンガの原画のタッチが精緻にすぎるからという理由もある。難しい蓋だ。

府中市 ちはやふる けやき並木の千早と太一蓋
住所:東京都府中市宮町1-41 府中駅前 けやき並木通り 駅から出て左側の歩道

 末次由紀のマンガ「ちはやふる」の蓋だ。競技かるたを題材にした人気マンガだ。府中市が舞台になっている。主人公の綾瀬千早と、真島太一が、府中のケヤキ並木に立っている、府中市にふさわしいキャラクター蓋だ。