多摩市――絶対正義かわいいのオーラ
多摩市は、あらいぐまラスカルとハローキティという全国的なブランドキャラクターで新デザインマンホール蓋を2種類2枚作った。
まずは、ハローキティ蓋を見るために設置場所の多摩センター駅に来た。さすがサンリオピューロランドの街。多摩センターは本気だ。多摩センター駅構内は、いたるところサンリオキャラばかりだ。
絶対正義「かわいい」の暴力装置と化している。多摩センター駅周辺を、うかうか歩いていると「かわいい」が色々な角度から襲ってくる。うっとり。
そして、マンホール蓋も例外ではない。
サイクリングコースとして有名な南多摩尾根幹線でキティちゃんが自転車に乗っているデザインだ。鋳物の凸の線がとても太く力強い。完成されたキャラクターが鋳物のもつ力強さとあいまって、有無を言わさぬ圧倒的なメルヘンと絶対正義かわいいのオーラを発している。
この蓋は樹木の間に設置されている。どうしても木の影がまだらに蓋に落ちやすい。他の同じような状況の蓋を撮影する時にもやっていたが、そういう場合は暗幕で大きな影を作って撮影することにしている。
新しいハローキティ蓋を設置した階段の下には、以前から設置されているハローキティ蓋が2種類ある。全3種類のハローキティ蓋がまとまっているのはありがたい。
多摩市が設置したもう1枚の新デザインマンホール蓋は、聖蹟桜ヶ丘駅が最寄の駅だ。日本アニメーション株式会社がある関係でラスカルを使用したデザインマンホール蓋が設置されている。
あらいぐまラスカルの蓋に見えるが、建物の形をしたポストのようなものもデザインされている。これは聖蹟桜ヶ丘駅前に設置されている青春のポストというものだ。
ジブリ映画の「耳をすませば」に出てくるアンティークショップ地球屋をモデルに鋳物で作られている。「耳をすませば」の舞台のモデルが聖蹟桜ヶ丘であることが設置の由来だ。蓋は、鋳物の青春のポストを鋳物で表現したわけだ。鉄分に鉄分をぶつけてくるスタイルだ。こういうのがたまらない。
さらに後ろの背景は同じく「耳をすませば」のモチーフになった桜ヶ丘ロータリーだ。一見、ラスカル蓋なのだが、ジブリ由来成分の多いコラボ蓋になっている。正式にコラボとは言えないので、間接コラボとでも言えばいいのだろうか。うまく作ったものだ。実際の風景をもとにしているが、その風景はジブリ映画のモチーフ。もしくはモチーフ由来の風景だ。ジブリとは一言も言っていない。青春のポストはポストの足をとったら地球屋になるので、かなりグレーだ。いや本当、うまくやった。隠れジブリ蓋1号になっている。
階段の下に設置されているが、ここは「耳をすませば」に出てくる階段のモデルだ。蓋の横の道を上がると桜ヶ丘ロータリーがある。小憎らしいところに設置している。素晴らしい。ラスカルは完全に隠れ蓑だ。
青春のポストには窓がついていて中を覗ける。イスにラスカルが座っていた。いろいろ混乱する。建築物をキャラクターモニュメント化した上で、内部に別キャラクターを投入している。混在するキャラクター。アクロバティックだなと思う。多摩市聖蹟桜ヶ丘は侮れない。
「スキマネーチャー」とも呼ばれる植物の宇宙
聖蹟桜ヶ丘駅から、新しく設置された隠れジブリ蓋の新ラスカル蓋にむかう途中、さくら通りを通る。この道には既存2種類のラスカル蓋がある。
残念ながらジブリ成分はない。カラーのない余白があり、鋳肌を楽しめる。カラーの無い鋳物の凹と、カラー樹脂の入った凹のバランスが良い。鋳物の良さを感じられる。
よく見ると、既存の2種類は同じ型で作られている。桜とイチョウ、どちらにカラー樹脂を入れるのか、うすい、おすいの文字の差し替えで2種類作っている。型を作る製作費をおさえたアイデアの勝利だ。とても賢い。
さらに良く観察すると面白い発見がある。
分かるだろうか。蓋盆栽だ。
「スキマネーチャー」とも呼ぶ。蓋の隙間にたまった土とタネから勝手に生えてきた草だ。たくましさと健気さが同居している。隙間が盆栽の鉢のようになり、こぢんまりとした植物の宇宙を感じる。通行人により踏まれ、蹴られるので小さな植物だけが育つ。毎日剪定している盆栽のようだ。
意図的でないのが、また面白い。盆栽のような宇宙がそこにでき上がっている。これもマンホール蓋研究の1ジャンルである。
写真=竹内正則
「東京都デザインマンホールめぐりのフィナーレは全31枚『密集地帯』の小平市・東大和市」へ続く
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